『テレビの中に入りたい』ノスタルジックなオープニング映像公開 怪物を写した場面写真も

9月26日より全国順次公開されるA24製作の映画『テレビの中に入りたい』のオープニング映像と場面写真が公開された。
本作は、90年代のアメリカ郊外を舞台に自分のアイデンティティにもがく若者たちを主人公にした“自分探し”メランコリックスリラー。全米で公開されると熱狂する若者たちが続出し、公開から1周年を記念して新たなグッズも発売された。第74回ベルリン国際映画祭ではパノラマ部門に正式出品された。
キャストには、『名探偵ピカチュウ』のジャスティス・スミス、『ダウンサイズ』のジャック・ヘヴン、『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』のヘレナ・ハワードらが名を連ね、スネイル・メイルとして音楽活動もしているリンジー・ジョーダンも出演している。監督と脚本は『Weʼre All Going to the Worldʼs Fair(原題)』のジェーン・シェーンブルンが手がけた。
毎週土曜日22時半。謎めいた深夜のテレビ番組『ピンク・オペーク』は生きづらい現実世界を忘れさせてくれる唯一の居場所だった。ティーンエイジャーのオーウェン(ジャスティス・スミス)とマディ(ジャック・ヘヴン)はこの番組に夢中になり、次第に番組の登場人物と自分たちを重ねるようになっていく。しかしある日マディは去り、オーウェンは一人残される。自分はいったい何者なのか。知りたい気持ちとそれを知ることの怖さとのはざまで、身動きができないまま、時間だけが過ぎていく。
作中に登場するテレビ番組『ピンク・オペーク』は、主人公の2人の少女・イザベルとタラが、敵であるミスター・憂鬱(メランコリー)の遣わす怪物たちと毎週戦うヒーローものの番組。月の男“ミスター・憂鬱(メランコリー)”が郡の各地に送り込むモンスターと戦うのが使命だと彼女たちは知るが、邪悪な彼は現実の支配を目論み、”真夜中の国“という監獄を作りイザベルとタラを閉じ込めようとする。
タラを演じるジョーダンは、スネイル・メイルとして、スマッシング・パンプキンズの名曲「Tonight, Tonight」のカヴァーも劇中に提供している。マディ役のジャック・ヘヴンは、「ヘレナとリンジーはすばらしくて、すごく面白い。2人は90年代のテレビ番組の雰囲気をとらえて、とても誠実に演じた」と語っており、イザベル役のハワードは自身の役について「イザベルは大胆だけど自分のパワーを恐れてもいる。タラとは深く結びついていて、自分の身に起こるすべてをどう受け入れたらいいのか完全には分かってない。でもそれがオーウェンに通じる部分よ。イザベルはオーウェンでオーウェンはイザベルなの」と明かした。タラ役のリンジー・ジョーダンも「番組を見てる子供たちにとってタラは象徴的な存在で、マディのヒーローよ。マディは彼女みたいになりたいと思ってる」と語った。
『ピンク・オペーク』の映像も本作と同様に35mmで撮影されているが、ポストプロダクションでVHSとベータマックスに変換するなど、多層的なメディア加工を経て再構築された映像は、独特の質感を作り出している。
シェーンブルン監督は「登場するモンスターたちそれぞれに異なる“レベル”や意味合いを持たせたかったんです。若い頃の曖昧な記憶や、不安定な感情が混濁した主人公たちといった、“信頼できない語り手”たちがこの映画を動かしています。12歳の時に郊外の地下室で見れば、テレビ番組は最高にクールなものに思えますが、中年になり抑圧されていてソファに横たわって見ると魔法は完全に失われてしまうと感じます。観客は提示されるメディアとの関係を問うべきです」と語る。また、映画の中のテレビ番組を作るにあたり、「皮肉や風刺を使いたくなかった。そういったテレビ番組が、自分自身や周囲の世界を懸命に理解しようとする子供たちに対して持っているパワーを軽視しないことが大事だと感じたからだ」と、大切にした軸を語っている。
公開されたオープニング映像は、マディから一緒に“P.O”(ピンク・オペーク)を観ようと自宅の地下室に誘われ、友人の家に泊まると親に嘘をついて家を出た少年オーウェンが、マディの家に入るやいなやブラウン管が放つピンク色の光に誘われ、引きつけられるようにテレビへと近づいていく印象的なシーンから始まる。
テレビからは「タラと私は精神でつながる親友」「サマーキャンプで出会い古代からの絆に気づいた」というイザベラの語りが聞こえ、真剣な面持ちで番組を食い入るように見るマディの姿や、「郡と郡の端に住んでるけど、協力して悪の勢力と戦ってる」「私たちは“ピンク・オペーク」というイザベルの語りに続いて、森の中を不安そうに歩くイザベルとタラが手を繋ぎ、タイトルの『THE PiNK OPAQUE』の文字が印象的に挿入される。
あわせて公開された場面写真では、オーウェンが母親と訪れた大統領選挙の投票所となっている学校で、ひとりぼっちで本を読んでいたマディの姿、その時夢中になって読んでいた「ピンク・オペーク」のオフィシャルブックのカバービジュアルも捉えられており、表紙にはイザベルとタラの姿や「エピソードガイド」と書かれた文字も確認できる。
さらに『ピンク・オペーク』のオープニングカットや、誰かの首に謎のピンクのオバケのようなキャラクターを描くカット、またキモ可愛いモンスターが、お皿に乗せた何かを愛おしそうに見つめるカットや、さ怪しげな“月の男ミスター・憂鬱(メランコリー)”が、グラウンドに立つオーウェンとマディを見下ろす幻想的なシーンなどが写し出されている。
■公開情報
『テレビの中に入りたい』
9月26日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
出演:ジャスティス・スミス、ジャック・ヘヴン、ヘレナ・ハワード、リンジー・ジョーダン
監督・脚本:ジェーン・シェーンブルン
共同製作:Fruit Tree
配給:ハピネットファントム・スタジオ
100分/ PG12
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