『Tシャツが乾くまで』はなぜ視聴者の心を掴むのか “家事”から浮かび上がる共感と喪失

金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』(TBS系)が話題である。『silent』(フジテレビ系)以降、『いちばんすきな花』(フジテレビ系)、『海のはじまり』(フジテレビ系)と優れた作品を多く生み出してきた脚本家・生方美久が、TBSで初めて執筆する作品である。
『カルテット』(TBS系)や『花束みたいな恋をした』の土井裕泰演出との初タッグというのも興味深い。TBSの大型ドラマ『VIVANT』と対極の魅力を持つ本作は、今期最も注目されている作品と言えるだろう。

一体何がここまで視聴者を強く惹きつけるのか。例えば、主人公・咲子を演じる蒼井優の圧巻の演技。映画界のみならずテレビドラマ界をも夢中にさせつつある中島歩の癖になる魅力。高橋文哉、夏帆、松山ケンイチら優れた演者たち。さらには、ありとあらゆる「考察」がSNS上に溢れても、常に予想を上回る展開の連続など、語るべきことは多いが、何より本作の素晴らしいところは、日常の些細な変化を通して、登場人物たちの心の揺れを、あるいは、変わっていくことの残酷さを描いていることではないだろうか。
それこそ第2話で樹生(中島歩)から、充(松山ケンイチ)とあずさ(夏帆)の第3金曜日の秘密を聞いた咲子が、ただコインランドリーで話しているだけなのかを聞いて「そういうドラマ流行ったじゃないですか」と言うように。名作ドラマ『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ系)や『金曜日の妻たちへ』(TBS系)とは一風違う本作は、心の繋がりだけで“倫理に反する”という意味の「不倫」という禁忌の境目を歩く人々を描いている。

「元は他人」である夫婦を、“家族”たらしめるものはなんだろうか。子どもという、目に見えてわかりやすい存在がいない場合、日常の積み重ねが、元は他人同士の人々を夫婦にしていくのではないか。それを最も端的に示したのが、本作に頻繁に登場する「家事」の描写だと思う。
『Tシャツが乾くまで』というタイトルそのものもそうだが、第1話冒頭は咲子と充の恐らく休日だろう家事の光景を通して夫婦の日常を描くところから始まった。ロールキャベツを作る咲子。エアコンのフィルターを掃除する充。走るロボット掃除機と乾燥機の存在が、現代の共働き夫婦らしい生活を物語っている。コインランドリーは、日常的に行く場所ではないけれど、それぞれの家族の洗濯という家事の延長線上にある場所で、日常と非日常の境目に位置する場所だ。その先で充とあずさ、そして今は咲子と樹生、2つの家庭の日常がつかの間交わり、この物語が始まった。




















