シャーリーズ・セロンのアクションは健在 『オールド・ガード2』に感じた“2作目”のジレンマ

『オールド・ガード2』“2作目”のジレンマ

 しかし、これらはあの形で終わった『1』の続編をやる以上、避けられない問題である。恐らく主演のシャーリーズ・セロンも分かっていたのだろう。セロンといえば「俳優になる夢を抱えてドン底生活を送っていた」「銀行でスタッフに母の仕送りを無下に扱われ激怒していたところをスカウトされた」など、そのハングリー精神と“もっている”感全開の逸話を持ち、心に『あしたのジョー』的な泪橋がかかっている人物だ。

 そんなセロンらしく「今回は私が頑張るしかねぇ!」とばかりに、大いにアクションをやっている。中盤のベロニカ・グゥとのタイマンは、本作のハイライトだろう。ベロニカはベロニカで、母国ベトナムの映画『ハイ・フォン:ママは元ギャング』(2019年)で投げやりな邦題をつけたNetflixのスタッフに「こらネトフリ! なんばしよっとか! 謝ってきんしゃい!」と迫りたくなるほどハードなアクションを演じた人物だ。そんな両雄の対決ということで、ここの満足感は高い。ちょっと往年のジャッキーっぽい舞台も良いし、長い手足を使うセロンに対して、アクロバットな動きで渡り合うベロニカなど、ふたりの対比も面白い。もちろんクライマックスは、セロンと悪の親玉ユマ・サーマンが激突。こちらも斧とゴツい剣のパワー型タイマンで魅せてくれる。

 本作は押さえるべきポイントはしっかり押さえているし、この堅実さは評価したい。もっともこれは前作ファンである私のひいき目が多分に入っているし、そんな濁った目を持ってしても地味なのは否めない。それに「終わる」ことを目指すあるキャラクターを巡る熱いドラマには、どこか監督自身の想いが乗っていたようにも思うが……それはさておき、ひとまず中継ぎの役目は果たしたと言えるだろう。次回は大爆走を期待できる締め方をした点にも拍手を送りつつ、『3』でこの鬱憤を晴らしてくれることを祈りたい。大丈夫、まだチャンスは1回残っているし、最後に取り返せば何とかなる! 明日の俺が何とかしてくれる! ——そういう気持ちはよく分かるから。

■配信情報
『オールド・ガード2』
Netflixにて配信中
出演:シャーリーズ・セロン、キキ・レイン、キウェテル・イジョフォー、ユマ・サーマン、マティアス・スーナールツ、マーワン・ケンザリ、ルカ・マリネッリ、ヴェロニカ・ンゴー、ヘンリー・ゴールディング
監督:ヴィクトリア・マホーニー
Eli Joshua Ade/Netflix © 2025

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