『あんぱん』メイコと健太郎の間に漂う“もどかしさ” 嵩とのぶはついに東京へ向かう

『月刊くじら』に掲載された嵩(北村匠海)の漫画は、好評だった。それでも、描き続けるほどに嵩の胸の奥には、誰にも言えない思いが滓のように残り続けていた。心の奥にひっそりと居座っているのは、のぶ(今田美桜)の存在だ。何かを誰かに届けたいと願いながらも、思うように形にできない自分がいる。その焦りを隠すようにペンを握り続けているのかもしれない。

亡き次郎(中島歩)の意志を引き継ぎ、のぶは再び一歩先へ進もうとしていた。迷いなく前を向き、弱い誰かの声を拾おうとするのぶの姿は、嵩にとっていつも遠くにあって眩しかった。どうしても近づきたいのに、踏み込むには勇気が足りない。そんな思いを、嵩はずっと自分の中だけに留めていた。NHK連続テレビ小説『あんぱん』第74話ではそんな嵩の止まっていた時間が、東京を前にして静かに動き始めた。
亡き次郎の形見でもあるカメラを手に、次郎が見ようとしていた景色を自分の目で確かめたい。その思いを胸に、のぶは東京へ向かう準備を進めていた。そんなのぶに、メイコ(原菜乃華)は「好きな人がいる」と打ち明ける。幸せになりたいとこぼすメイコに、のぶは「あの人とだったら不幸になってもいい。本当に好きやということやないやろうか」とそっと言葉を返し、家を後にした。

身なりを整えてメイコ(原菜乃華)が向かった先は、もちろん健太郎(高橋文哉)がいる場所だった。メイコは「たまたま通りかかった」と取り繕ってみせたが、それはもちろん照れ隠しだ。今もまだメイコの心には、健太郎への想いが残っている。ふと口にした「健太郎さんにも、そういう人はおりますか?」という問いに、健太郎は静かに「どうせだったら幸せになりたい」とだけ答えた。いつまでもすれ違い続けるメイコの恋は、叶いそうで叶わない距離のまま揺れている。そのもどかしさが観ていて切なくなってくる。けれど、そのもどかしさも含めて青春の醍醐味でもある。





















