“ホスト”は今どう描かれるべきか? 『愛の、がっこう。』が描く格差と分断の現代社会

『愛の、がっこう。』が描く格差と現代社会

 筆者がこのドラマで最も興味を惹かれたのは、ホストという職業を描いていることだ。

 現在、悪質なホストクラブを巡る問題が深刻化していることは周知の通り。特に、客に多額の売掛金を負わせ、その支払いのために売春を強要するといったケースが社会問題となっていた。この状況を受けて、政府は改正風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)を2025年6月28日に施行。恋愛感情を利用して高額な飲食をさせる「色恋営業」や、ホストクラブの広告でよく見られる「〇億円プレイヤー」「指名数No.1」「〇〇を推せ」といった文言も規制の対象となった。

 この規制強化を受けて、カリスマホストのローランドは「よりエンターテイナーになっていかなければいけない」「来たからには楽しませてくださいという、本質的なサービス業の根本に戻る」と発言(※2)。明らかにいま、ホストという職業に対する風当たりは強くなっている。ABEMAで放送されていた番組『山本裕典ホストになる』に対し、「世間で悪質ホスト問題が騒がれている今、ホストを美化するような番組を作成するのはいかがなものか」という公開質問状が送られたことも、記憶に新しい。

 ではなぜ、井上由美子はあえてこの時期に、このような題材を描くことを決断したのか。カヲル役を演じるSnow Manのラウールは、オフィシャルサイトでこのようなコメントをしている。

「今回、助監督の方が何度も通って、実際のホストクラブを取材してくれたんです。その記録を読むうちに、これは100%理解できる職業とは言い切れないけど、どこかに誰かを救いたい、癒したいという気持ちもあるのかなと思えるようになって。カヲルにもどこかピュアな部分があるんじゃないかと感じるようになりました」(※1)

 一度貼られたレッテルを取り除くことは難しい。特にSNS空間において、そのような傾向は顕著だろう。ラウールの語る「どこかに誰かを救いたい、癒したいという気持ちもあるのかなと思えるようになって」という言葉には、あらゆる事象を白か黒、ゼロかイチで考える単純な思考法ではなく、全てはグラデーションであるという事実を示唆している。

 格差と分断が進む現代社会を禁断のラブストーリーとして描き、ホストという職業にあえて光を当てる。『愛の、がっこう。』は鮮烈な恋愛ドラマになると同時に、インパクトの大きい社会派ドラマになるのではないだろうか。期待大、である!

参照
※1. https://www.fujitv.co.jp/aino_gakkou/introduction/index.html
※2. https://realsound.jp/tech/2025/07/post-2076238.html

『愛の、がっこう。』の画像

木曜劇場『愛の、がっこう。』

井上由美子が完全オリジナルストーリーで描く、すれ違うことすらないはずの2人が出会い、惹かれ合うラブストーリー。高校教師・小川愛実が、文字の読み書きが苦手なホスト・カヲルに秘密の“個人授業”を続ける中で次第に距離を縮めていく。

■放送情報
木曜劇場『愛の、がっこう。』
フジテレビ系にて、7月10日(木)スタート 毎週木曜22:00~22:54放送
※初回15分拡大
出演:木村文乃、ラウール(Snow Man)、田中みな実、中島歩、坂口涼太郎、味方良介、野波麻帆、早坂美海、荒井啓志、別府由来、りょう、筒井真理子、酒向芳、沢村一樹
脚本:井上由美子
演出:西谷弘
プロデュース:栗原彩乃
音楽:菅野祐悟
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/aino_gakkou/
公式X(旧Twitter):https://x.com/aino_gakkou
公式Instagram:https://www.instagram.com/aino_gakkou/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@aino_gakkou

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