広瀬すずから當真あみへ 『ちはやふる-めぐり-』で受け継がれる“ヒロインの煌めき”

當真あみが広瀬すずから継承したヒロイン力

 あのとき結ばれた物語が、想いをつないで再びめぐる。2018年に公開された映画『ちはやふる 結び』から7年の時を経て、7月9日から日本テレビ系で放送がスタートする『ちはやふる-めぐり-』。原作の完結から10年後の世界を舞台に、青春すべてをかけて競技かるたに挑む高校生たちの成長譚が描かれる本作で、広瀬すずから主演のバトンを受け継いだのが當真あみだ。

 今、もっとも勢いのある10代の若手女性俳優といっても過言ではない。4月に公開された『おいしくて泣くとき』では、主演の長尾謙杜(なにわ男子)演じる風間心也が思いを寄せるヒロインの夕花を演じ、10月公開予定の酒井麻衣監督の新作映画『ストロベリームーン』では主人公の少女・桜井萌に主演として抜擢された。さらには、2026年に公開を控える柚木麻子原作の映画『終点のあの子』では、中島セナとともにW主演を務めることが決定している。

 當真の出演作品を観ていると、自然と彼女の声に聴きいって、気づけばその芝居に目を奪われてしまう。風鈴の音が鳴るような瑞々しさと、瞬きするたびに、いつ消えてもおかしくないと思わせる儚さ。當真あみという俳優がまっさらな頃から持ち合わせているのは、間違いなくヒロインに必要不可欠な輝きと透明感だった。

『かがみの孤城』で考えるフィクションの役割 童話的な“オオカミの恐怖”が持つ意味とは

童話の世界では、オオカミはしばしば敵役として描かれる。彼らがなぜ羊を狙い、赤ずきんちゃんを追うのか、「食べたいから」以外の理由は…

 声優に初挑戦したアニメーション映画『かがみの孤城』(2022年)では、とある理由から学校で居場所を無くして不登校になってしまった少女・こころに息を吹き込んだ。無垢な心を言葉に反映させたような當真のたどたどしいセリフは、不安と臆病な心、そして、ほんの少しの好奇心を胸に携えるこころの内面を静かに浮かび上がらせる。監督を務めた原恵一から「彼女しかいない」とオーディション時点で絶賛されたことからも、主演を射止めた當真の“声”には、多くの人の心に共感を抱かせる力があるといえるのではないだろうか。

『水は海に向かって流れる』が切り取ったリアルな空気感 映画でしか表現できない“味わい”

ああ、いい肉を買いに行きたい。それを豪快に刻んだ玉ねぎとめんつゆで雑に煮て、ごはんの上にのせた「ポトラッチ丼」なる牛丼が食べたい…

 さらに、當真の初長編映画出演作となった『水は海に向かって流れる』(2023年)では、広瀬すず、高良健吾、生瀬勝久といった錚々たる面々に囲まれながらも、等身大な煌めきを遺憾なく発揮する。彼女が演じた泉谷楓は、素直で明るい性格ながらも、主人公の直達(大西利空)への恋心を秘める役柄だ。教室で直達と会話しているときは、秘密を共有していることにウキウキして瞳を輝かせながらも、彼が榊さん(広瀬すず)への想いを口にすると、ふと目を伏せる。瞳の動きだけで言葉にできない心中を表現する當真が演じる楓が、音楽室で直達に秘めていた恋心を打ち明けて「ご理解いただけたか。このハート泥棒」と言い残して去っていく挙動は、あまりにも愛おしくて、観ていて悶えてしまうほどだった。

 一方で、洗濯物を干す榊さんと対峙するシーンでは、明確な意思を宿した瞳を潤ませながら、楓の心に渦巻くモヤモヤとした想いをはっきりと言葉にする。物語のラストで、榊さんのために教室を飛び出す直達を見送りながら笑みをこぼすも、表情には寂しさを覗かせるなど、各場面でときめきを随所にちりばめた純粋な芝居を見せてくれた。

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