『未知のソウル』は全ての現代人に向けた人間讃歌だ 共感の軸になった“不器用”さと愛

『未知のソウル』が描き続けた“不器用”さ

 一方でブノンは、ホスの父親の再婚相手で、ホスの実母でないことが明らかになった。ホスに対してどこか遠慮がちなブノンの態度の原因はこれだったのか……と納得する。ブノンはホスの父親の死後、ホスを引き取る際に自分の家族と絶縁していた。血のつながらない息子を一人で立派に育て上げたわけだが、ホスにとってそれが重荷だったようだ。

 ホスの耳の状態が悪くなった際、連絡をシャットアウトしていたホスの自宅に強硬手段で乗り込み、思いのたけを爆発させるブノンに胸が熱くなった。ホスも本音をぶちまけ、最後に熱いハグを交わし、初めて本当の親子になれた2人に涙がこぼれて仕方がなかった。

 オッキを演じるチャン・ヨンナムと、ブノンを演じるキム・ソニョンは、韓国ドラマではおなじみの俳優だ。「オモニ(お母さん)」役もたくさん演じているが、本作ではオモニとしてだけでなく、女性の生きざまをベテラン俳優ならではの力量で見せてくれた。

 ケガをしたブノンの髪をオッキが洗ってあげるシーンが良い。髪を洗ってもらいながらさりげなくホスとの関係を打ち明けるブノンとそれに応えるオッキ。2人の厚い絆が感じられる心に残る名シーンになった。

愛すべき不器用な人たちに幸あれ!

 人生とはなんと過酷で上手くいかないものなのだろう……。このドラマで何度も抱いた思いだ。短距離選手として輝かしい栄光を手にしようとしていた矢先にケガを負ったミジ。必死に勉強して入社した会社で、いわれのないいじめを受けたミレ。高校時代の初恋の相手とやっと交際できたのに、耳に異常が出て苦しむホス。大好きな祖父からの電話に出ることを拒否せざるを得なかったセジン。神様がいるとしたら、なぜこんな試練を与えるのか聞いてみたいところだ。

 そして困難に直面した本作の登場人物たちのなんと不器用なこと! 他人に迷惑をかけまいと1人で問題を抱え込み、苦しむ姿に胸がギュッとなる。「まわりに全部ぶちまけてしまえ!!」と叫んだ人も少なくないだろう。

 不器用な人たちが必死になって人生を切り開いていく姿が、この物語の肝になっている。「負けても最後まで味方でいること、何百回でも何千回でも一緒に負けるのが愛だ」をはじめとした数々の名言が生まれた本作。

 これからも愛すべき不器用な人たちが、負けながらも愛を守り抜いていけるよう、願わずにいられない。

■配信情報
『未知のソウル』
Netflixにて配信中
出演:パク・ボヨン、パク・ジニョン、リュ・ギョンス
演出:パク・シヌ
脚本:イ・ガン
(写真はtvN公式サイトより)

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