心震わすパク・ジニョンの涙 『未知のソウル』が教えてくれた“自分を慈しむ”ことの尊さ

毎週多くの視聴者の共感と感動を生んだNetflixで配信された韓国ドラマ『未知のソウル』。Netflix内のランキングにおいても、『イカゲーム』に続く第2位を獲得し、注目を集めている作品であることが窺える(7月1日付)。『今日もあなたに太陽を』『照明店の客人たち』で、心を揺さぶる芝居を見せて実力派への道を驀進中のパク・ボヨンが、『未知のソウル』で彼女の代表作となるキャラクターを更新した。本稿では第11話と最終話を中心にご紹介したい。(以下、ネタバレを含みます)
本作は、パク・ボヨンが双子の主人公である、ユ・ミレとユ・ミジを演じており、初回から見事な演じ分けに話題沸騰となった。ミレ(=未来)とミジ(=未知)の双子の姉妹は、30歳となるも互いに人生に行き詰まりを感じている。姉のミレは、エリートとして公社に勤めるが、不正を告発して社内いじめを受け、自殺未遂を起こす。一方、妹のミジは、得意なこともなく無職となり、やりたいことも見つけられない日々。そんな“人生が詰んだ”双子の姉妹と、障害を持つ同級生で弁護士のイ・ホス(パク・ジニョン)、元資産運用会社CIOのハン・セジン(リュ・ギョンス)ら登場人物たちの葛藤と成長が描かれた物語は、観る者の心を揺さぶり、涙腺を刺激し続けた。彼女たちが“自分の道”を見つけていく成長の軌跡は、一時的なものではなく心に刻みこまれるような余韻を残して幕を閉じた。
ミジは、突発性難聴を発症したホスから別れを告げられる。ホスは、自分の障害に気を遣い続けるミジの姿に耐えられず、彼女を突き放してしまう。ミジは、ホスを引き留めようとするも、自身が引きこもっていた時の心境を思い出し、ホスを引き留めることができなかった。

一方、ミレは、公社の不正をセジンの手を借りてマスコミに告発した。それによって、ミレをいじめていた上司たちが次々に処分を受ける。ミレは、公社を辞めてドゥソン里に帰郷してセジンの農場を継ぐことにする。ミレは、セジンが祖父から継いだ農場経営の後継者を探していることを知り、投資に興味がありながらも、セジンからのアメリカ行きの誘いを断り農場を引き継ぐことを選択したのだ。ミレは、セジンの投資ブログをずっと読んでいたことから、自分も農業を行いながら投資ブログを書いて、投資の仕事への土台作りを始めることを決心する。ミレとセジンの関係性は、恋に奥手なミレのペースでゆっくりと進んでいくのだろう。“約束”を交わす際の、ふたりの小指の触れる距離が変化していくさまに、ミレの心がセジンへと近づいていることが窺える。リュ・ギョンスが演じたセジンは、飄々としつつも、マイペースさと優しさと切れ者っぷりを融合させた魅力的な人物として視聴者に愛された。

最終話では、ミレもミジも、自分の道を見つけて歩んでいく姿が描かれたが、印象深いのが、第1話からずっと開け放たれたままのミジの自室のドアの秘密だ。ミジがドアを閉められなかったのは、また引きこもってしまいそうだったという心の内が明かされたのだ。彼女は、祖母ウォルスン(チャ・ミギョン)が倒れたことをきっかけに外に出て、明るく気丈に振る舞っていたが、引きこもった心は自室に置いたままだったのだ。
ミジは、心を閉ざしてしまったホスに対して、どうしていいのか分からなくなりヒョン・サンウォルの前で涙を流す。サンウォルは、ミジに「“私はここにいる”、“ここで待っている”と扉を叩いて知らせてあげればいい」と勇気づける。この言葉を聞いたミジは、ホスの元に向かうため、過去の閉じこもった自分の心を開けて外に出る。「外でみんな待ってる」「扉を開けるだけでいい」と勇気を出して、ミジがドアを開けた途端、ホスが立っているのだから涙してしまう。
突発性難聴を発症し、恐怖から殻に閉じこもってしまったホスを支えたのは、母ブノン(キム・ソニョン)だった。この母と息子の温かな関係性と強い絆に毎回泣かされている。ブノンは、ホスの亡父(キム・ジュホン)が、ホスに伝えかけた言葉の続きをホスに告げる。
「ホス、いつかお前も誰かを苦しめる。身近な人を負かす瞬間が必ずやって来る。だがな、ホス、愛というのは勝ち負けではなく、負けても最後まで味方でいること、何百回でも何千回でも一緒に負けるのが愛だ」

本作では、心の宝石箱に入れておきたい珠玉の名言が何度も紡がれてきたが、この言葉は張り詰めた部分を柔らかく溶かし、「愛すること」を教えてくれる。紙に書いて壁に貼っておきたい名台詞だ。




















