鬼頭明里が「おはよう」の4文字に込めたすべて 『鬼滅の刃』禰󠄀豆子役は納得の抜擢

これまでのキャリアを振り返ると、鬼頭は必ずしも禰󠄀豆子だけで評価されてきたわけではない。たとえば『ようこそ実力至上主義の教室へ』の堀北鈴音では、理知的で無感情に見える少女を、わずかな声のトーンの揺らぎで繊細に描いた。また、『地縛少年花子くん』の八尋寧々では、一転して明るく騒がしく、コメディとロマンスを自在に行き来する。軽快でテンポのいい掛け合いの中でも、ふとした弱さを覗かせる呼吸は健在だ。
『安達としまむら』の安達桜も忘れがたい。モノローグが多いが、声の抑揚だけでキャラクターの内面を立ち上げる。それは鬼頭の技術と呼ぶべきなのか、センスと呼ぶべきなのか。言葉にすればシンプルだが、一つ一つの言葉に込める体温の違いで、誰かに恋する不器用さや心のざわめきを、観客の胸にそっと届けてくれる。そんな繊細な声の運び方ができる人だからこそ、禰󠄀豆子のように言葉を封じられた役でも、その奥にある物語を確かに響かせることができたのだろう。
禰󠄀豆子という役は、鬼頭にとっての大きな挑戦だったに違いない。声優として当然のように使ってきた言葉という武器を封じられ、その中でどれだけの感情を届けられるかが試された。でも彼女は、その制約を新しい表現の糧に変えてみせるだけではなく、その声に宿る小さな息遣い一つでファンの心を虜にしてしまった。
これから先、どんな役を演じても、あの禰󠄀豆子の息遣いはきっと私たちの声の奥に残り続けるのだろう。言葉を超えて届く声の力を知っているからこそ、鬼頭明里の演技はこれからもきっと、まだ見ぬ物語に新しい温度を吹き込んでくれるはずだ。『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』ではどんな活躍が観られるのか。久しぶりの禰󠄀豆子との再会が楽しみだ。
■放送情報
『特別編集版「鬼滅の刃」刀鍛冶の里 繋いだ絆編』
フジテレビ系にて、7月6日(日)19:00~22:13放送
キャスト:花江夏樹(竈門炭治郎役)、鬼頭明里(竈門禰󠄀󠄀豆子役)、下野紘(我妻善逸役)、松岡禎丞(嘴平伊之助役)、小西克幸(宇髄天元役)、石上静香(まきを役)、東山奈央(須磨役)、種﨑敦美(雛鶴役)、沢城みゆき(堕姫役)
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
アニメーション制作:ufotable
主題歌:Aimer「残響散歌」「朝が来る」
©︎吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable





















