花澤香菜は“愛されるキャラ”を生み出す名人 『鬼滅の刃』甘露寺蜜璃はギャップが魅力に

花澤香菜は“愛されるキャラ”を生み出す名人

 花澤香菜の声には、人を惹きつける柔らかさと、ふとした瞬間にのぞく芯の強さがある。かわいさ、儚さ、そして時折にじむ妖しさ。その振り幅の広さは、数多くの作品を通して証明されてきた。新しい役に触れるたびに、「次はどんな声を聴かせてくれるのか」と期待させる稀有な存在だ。

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 そんな花澤が演じる『鬼滅の刃』の恋柱・甘露寺蜜璃は、まさにこれまでのキャリアの到達点の一つと言っていいだろう。恋に生きる剣士。添い遂げる殿方を探すために鬼と戦う姿はあまりに突飛で愛らしい。しかし、『鬼滅の刃』の世界では、その異色の動機を持った柱も違和感なく存在している。その説得力の根拠は、花澤の声が持つ“奥行き”にほかならない。

 そんな花澤の代表作とも言える本作は、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』公開を記念し、「無限列車編」から「柱稽古編」までの物語が全7日にわたって放送されている。

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 『鬼滅の刃』の世界観は、家族の死、復讐、苦しみといった血の匂いのするドラマで成り立っている。そんな中で蜜璃は、悲劇性を背負わず、むしろ無邪気に「幸せ」を探し続けるキャラクターだ。その軽やかさが浮いて見えないのは、花澤が蜜璃の“お気楽さ”を演技で都合の良いお飾りにせず、その裏にある揺らぎや弱さを声のニュアンスで示しているからだ。高めの声色に混ぜ込む息遣い、蜜璃の「キュン」という口癖一つを取っても、甘さだけでなく、どこかで自分を信じ切れない影が潜んでいる。だから蜜璃のかわいさは、単なる萌え要素にとどまらない。過酷な戦いの中で、彼女が笑顔を絶やさない意味を、視聴者に“声”で感じさせる。

 もう一つ、蜜璃を演じる花澤の演技が光るのは戦闘シーンだ。恋の呼吸、しなる刀、艶やかな動き。蜜璃の戦い方は、他の柱の力強さとは異なる優美さに満ちている。だが優雅さだけではない。上弦の鬼を前にしたとき、蜜璃の声は一気に芯を帯びる。息を含んだ可憐さの奥に、敵を斬り伏せる覚悟が滲んでおり、その声色の切り替えが、蜜璃というキャラクターの“矛盾”を矛盾のまま成立させている。

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