芦田愛菜、『果てしなきスカーレット』で新天地へ? 細田守作品の歴代キャストにみる共通点

芦田愛菜、細田守作品“復讐”演技で新天地へ

 そうした芦田の演技に、スカーレットと共に異世界を旅する青年・聖を演じる岡田がどこまで食らいついているのかも、観る前から興味をかきたてられる点だ。岡田の俳優としての実績は申し分ない。『国宝』(2024年)の李相日監督による『悪人』(2010年)で演じた増尾圭吾や、アカデミー賞で国際長編映画賞を獲得した濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(2021年)で演じた高槻耕史のような、美形だが癖のある青年の役で強烈な印象を残し続けている。

 『果てしなきスカーレット』で演じる聖は、気がつくと現代から“死者の国”へと来てしまっていた看護師で、傷ついたスカーレットを助けて共に”見果てぬ場所“に向け旅をする。「復讐に燃えるスカーレットの鞘(さや)のような存在となれるよう、彼女の支え方や寄り添い方、聖の優しさや誠実さを伝えられるようにキャラクター像を作っていきました」(※)というコメントからは、聖が“良い人”ということが伺える。好青年を演じても岡田は普通にこなせるが、今回は声だけということで、「感情がこんなにも伝わりづらくなることを今回初めて知りました」(※)と録音時に感じたそうだ。

 ただ、細田監督は男性俳優の起用も巧い。『サマーウォーズ』(2012年)では芦田と並ぶ名子役だった神木隆之介を起用して男子高校生を演じさせ、後の新海誠監督作品『君の名は。』(2016年)での好演へと続く声優としての道を付けた。『竜とそばかすの姫』(2021年)では反対に『天気の子。』(2019年)の勅使河原克彦役がユニークだった成田凌を起用して、ヒロインを見守る高校生を演じさせた。その役に合うからこそ選ぶ起用法から考えるなら、『果てしなきスカーレット』の聖という役には、岡田の声と演技が必要だったということだろう。映画が公開されれば、聖という役が持つ意味とともに岡田が起用され理由も分かるだろう。

 今回のキャストの発表と同時に、『果てしなきスカーレット』のアウトラインも明らかになった。中世の欧州が舞台になった歴史ドラマではなく、中世風の異世界を舞台にしたファンタジーとも少し違った、“死者の国”という独特な世界を舞台にした重厚なストーリーが繰り広げられるようだ。中世の王女と現代の看護師という、現実には絶対に出会うことのない2人がパートナーとなって未知の荒野を進んでいく展開の中に、お互いが抱えた苦悩を分かち合い、認め合うような変化を感じ取れるのかもしれない。

 父親の復讐という目的を果たす必要に迫られているスカーレットに対して、聖がどうして“死者の国”に引きずり込まれたのかが見えていないのが気になるところ。迷うスカーレットに助け船を出すだけの役割ではなく、聖にも聖なりに“死者の国”で果たすべき使命が与えられていたのだとしたら、それが同じ現代に生きる観客にとっても、切実な問題として響いてくるのかもしれない。あるいは俳優として演じた役のように、ただの“良い人”ではない可能性も? そこは観てのお楽しみだ。

参考
https://realsound.jp/movie/2025/07/post-2078264.html

■公開情報
『果てしなきスカーレット』
11月21日(金)公開
出演:芦田愛菜、岡田将生
監督:細田守
配給:東宝
©︎2025 スタジオ地図
公式サイト:https://scarlet-movie.jp/
公式X(旧Twitter):https://x.com/studio_chizu
公式Instagram:https://www.instagram.com/studio_chizu/
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