若山詩音、『ダンダダン』モモ役は必然だった 『リコリス・リコイル』からの着実な歩み

『リコリス・リコイル』のたきなでは、当初は冷たさすら感じる合理的な少女が、物語が進むにつれて人間味を取り戻していく。その変化を派手な表現で煽るのではなく、息の混じり方や声の抑揚や揺らぎだけで示していたのが印象的だった。『SSSS.DYNAZENON』の南夢芽でも、青春の生々しさを丁寧な呼吸と間の取り方で描いていた。振り幅という意味では、『甘神さんちの縁結び』の甘神朝姫のように、優しく甘い声で思春期の柔らかさを描く一方で、『好きな子がめがねを忘れた』の三重あいでは、息を多めに含んだ小さな声で、耳元でそっと話しかけてくるような親密さが生まれていた。この柔軟さとリアリティの両立は、決して一朝一夕で手に入るものではない。
同じ年の中で、これほど空気感の異なる役柄を続けて演じ分ける声優はそう多くないだろう。しかも、そのどれもが作品の中で重要な芯を担っている。若山はキャラクターごとに声のトーンを変えるだけでなく、その役の“奥行き”を生み出している。だからこそ、例えばたきなの冷徹さの裏にある熱や、夢芽の無防備さ、朝姫の柔らかさが、画面越しにもはっきりと息づいて見えるのだ。
こうした演技の中核にあるのが、彼女が俳優として培ってきた身体ごと芝居をつかむ感覚だ。劇団ひまわりで幼少期から身につけてきた舞台と映像の所作。声だけでなく、そこにいる人の仕草や表情まで感じさせるからこそ、若山の演じるキャラクターは、一度観たら忘れられない存在になっているのだろう。
『ダンダダン』第2期を皮切りに、『光が死んだ夏』『フェルマーの料理』『追放された転生重騎士はゲーム知識で無双する』など、この夏以降も話題作への出演が目白押しだ。今、アニメという表現がどこまでリアルを追求できるのか。その最前線に、若山詩音という声優がいることは間違いない。その姿を、まずは『ダンダダン』で確かめてほしい。
霊媒師の家系に生まれた女子高生・モモ<綾瀬桃>と、同級生でオカルトマニアのオカルン<高倉健>。モモがクラスのいじめっ子からオカルンを助けたことをきっかけに話すようになった2人だったが、「幽霊は信じているが宇宙人否定派」のモモと、「宇宙人は信じているが幽霊否定派」のオカルンで口論に。互いに否定する宇宙人と幽霊を信じさせるため、モモはUFOスポットの病院廃墟へ、オカルンは心霊スポットのトンネルへ。そこで2人は、理解を超越した圧倒的怪奇に出会う。窮地の中で秘めた力を覚醒させるモモと、呪いの力を手にしたオカルンが、迫りくる怪奇に挑む!運命の恋も始まる!?オカルティックバトル&青春物語、開幕!
■放送・配信情報
TVアニメ『ダンダダン』
第1期:各配信サイトにて全話順次配信中
第2期:MBS/TBS系スーパーアニメイズム TURBO枠にて、7月3日(木)スタート 毎週木曜0:26〜全国同時放送
キャスト:若山詩音(モモ/綾瀬桃)、花江夏樹(オカルン/高倉健)、水樹奈々(星子)、佐倉綾音(アイラ/白鳥愛羅)、石川界人(ジジ/円城寺仁)、田中真弓(ターボババア)、中井和哉(セルポ星人)、大友龍三郎(フラットウッズモンスター)、井上喜久子(アクロバティックさらさら)、関智一(ドーバーデーモン)、杉田智和(太郎)、平野文(花)、磯辺万沙子(鬼頭ナキ)、田村睦心(邪視)
原作:龍幸伸(集英社『少年ジャンプ+』連載)
監督:山代風我
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
音楽:牛尾憲輔
キャラクターデザイン:恩田尚之
宇宙人・妖怪デザイン:亀田祥倫
アニメーション制作:サイエンスSARU
第1期オープニングテーマ:Creepy Nuts「オトノケ」
第1期エンディングテーマ:ずっと真夜中でいいのに。「TAIDADA」
©龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会
公式サイト:https://anime-dandadan.com/
公式X(旧Twitter):@anime_dandadan
























