上白石萌歌が“原作もの”に引っ張りだこなワケ 作品に溶け込む“自然体”の演技を紐解く

上白石萌歌“原作もの”に引っ張りだこなワケ

 そして、上白石が出演した“原作もの”といえば、沖田修一監督の『子供はわかってあげない』(2021年)での演技も印象的だ。本作で彼女は、水泳部に所属する主人公の朔田美波をこれまた愛嬌たっぷりに演じている。思わぬきっかけを通して同じアニメが好きなことが判明し、徐々に仲を深めていく門司くん(細田佳央太)とのやりとりは、何度観ても頬が緩んでしまうほど愛おしい。原作である田島列島の同名漫画で描かれる独特な空気感が反映された映像のなかで、まるでストレッチをするかのように伸びやかな芝居を披露する上白石の姿は、何気ない会話にも穏やかな作品のトーンにも絶妙に溶けこむ。

『子供はわかってあげない』(c)2020「子供はわかってあげない」製作委員会(c)田島列島/講談社

 そして、特筆すべきは物語のラストシーン。学校の屋上で門司くんに向かって告白を試みるも、真剣なときほど美波は笑ってしまい、二の句を告げない。しかし、門司くんがそんな彼女の目を手で覆ってあげた瞬間、美波の口からはとめどなく言葉があふれていく。あまりにも自然にこぼれ落ちた涙の美しさが忘れられなくなる、上白石のメモリアルな一作だ。

『パリピ孔明 THE MOVIE』©︎四葉夕ト・小川亮/講談社 ©︎2025 「パリピ孔明 THE MOVIE」製作委員会

 さらに彼女は、2023年にドラマ化された『パリピ孔明』(フジテレビ系)で、突飛な世界観を生きるキャラクターにハマることもすでに証明済み。4月に公開された映画『パリピ孔明 THE MOVIE』でも引き続き、現世に転生した軍師・諸葛亮孔明(向井理)のサポートによって才能を開花させていくアマチュアシンガー・月見英子を演じた彼女は、そのライブパフォーマンスに一層の磨きをかけて観客を魅了していた。聴く人を瞬時に引きこむシンガー“EIKO”の歌声は覆うべくもないが、その実、自信を持てずに思い悩みながらも、孔明から自立するために奮闘する等身大な英子の姿もきめ細やかに表現している。個性的な役柄だとしても、芝居のトーンを適度にチューニングする技量があるからこそ、英子の表情はとびきりキュートに映し出されるのだろう。

『ロマンティック・キラー』©2025「ロマンティック・キラー」製作委員会 ©百世渡/集英社

 多彩な才能が輝きを増しつつある今、映画『ロマンティック・キラー』で上白石が演じることになったのは、絶対に恋愛したくないにもかかわらず、強制的にロマンティックな展開に巻き込まれることになった女子高生・星野杏子。“ぶっ飛ばし系ラブコメディ”と謳われる本作で、さまざまな恋愛フラグをへし折りながら、恋に落ちること間違いなしの状況を打破して、カッコいい男子たちをなぎ倒していく……。キャラクター造形だけでも愛嬌たっぷりの杏子を演じる上白石萌歌を思い浮かべただけで、すでに公開が待ち遠しくなってしまった。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる