『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が描いた“信念の継承” 煉獄杏寿郎が見せた柱としての覚悟

『無限列車編』が描いた“信念の継承”

 『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』の公開を控え、これまでの物語を一気に振り返る特別企画が始まる。フジテレビ系では、「劇場版『無限城編』公開記念! 『鬼滅の刃』全七夜特別放送」と題し、「無限列車編」から「柱稽古編」までのアニメシリーズを全7夜にわたりオンエア。6月28日の初回は、土曜プレミアム枠にて『「鬼滅の刃」無限列車編 特別放送』が届けられ、TVアニメ「無限列車編」第1話と劇場版『無限列車編』が放送される。

 全七夜にわたる今回の企画では、「思いの継承」という本作の根幹にあるテーマが、シリーズを通してどのように積み重ねられてきたかを体感できる機会となる。なかでも劇場版『無限列車編』は、その“出発点”にあたる重要なエピソードとして、いま改めて見る価値があるだろう。

 そもそも『鬼滅の刃』は、週刊少年ジャンプ作品の中でも、やや異色のスタートを切った作品だと指摘する声も多い。斬首や血飛沫といった生々しい描写、家族を殺された少年が復讐のために剣を取るという導入。悲劇と暴力が交錯する物語構造は、むしろダークファンタジーの系譜に近い印象を与える。

 とはいえ、ジャンプが掲げてきた「友情・努力・勝利」という王道のテーマが、本作に欠けているわけではない。『鬼滅の刃』は、過酷な世界の中でなお希望を紡ぎ続ける人間の強さを、“ダークファンタジーという衣”に包んで描いた、ひとつの王道作品ともいえるだろう。

 なかでも『無限列車編』で際立っていたのが、「継承」というモチーフである。煉獄杏寿郎の最期を見届けた炭治郎には、戦う理由に変化が訪れる。それまで彼は、「鬼になった妹を人間に戻す」というあくまで個人的な願いのために剣を握っていた。だが、煉獄の死を経て、その思いは「誰かの意志を受け継ぎ、次に繋げる」という行動へと昇華されていく。

 『るろうに剣心』の「天翔龍閃」、『ジョジョの奇妙な冒険』の「黄金の精神」、『ONE PIECE』における麦わら帽子の象徴……。『週刊少年ジャンプ』の作品は、世代や立場を超えて託される“思い”が物語を貫いてきた。そして『鬼滅の刃』もまた、その系譜に連なる作品である。呼吸法や剣技といった技術の継承にとどまらず、「肉体は滅びても、思いは受け継がれ、生き続ける」という信念こそが、物語の核心に据えられているからだ。

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