実写版『リロ&スティッチ』は大人でも感動できる? 日本でも大ヒットの理由

『リロ&スティッチ』日本でも大ヒットの理由

スティッチがとにかくかわいい! けど内容は大人にも刺さりまくり?

 さて、兎にも角にもスティッチのかわいさを語らないことに始まらない。アニメーション版と同じく表情豊かな彼は、リロの“犬”として本作でも大暴れ。モフモフした毛並みがとにかくかわいい。しかし、そのかわいさに頼ることなく、映画のプロットは意外にもリロとナニの姉妹・家族愛にフォーカスしている。破壊するために作られたエイリアンのスティッチが壊れかけた家族の絆を再びつなぐことになる。

 かわいらしくて楽しいスティッチのおかげでいいバランスを保っているのだが、内容としては両親を亡くした後、ナニがリロの母親代わりになってどうにか2人で暮らし続けられるよう奮闘する、割と現実的な苦労物語だ。子供の頃にアニメーション版を観たときにはエイリアンと少女の遭遇、そして騒動にワクワクしていたが、大人になって実写版に触れると、ナニのバイト面接シーンは観ているだけで胸にくるものがあるのだ。もちろん子供がいれば親目線でリロやナニの姉妹愛に泣けてしまうし、そうでなくても「家族」のテーマがもっと刺さる。それに『リロ&スティッチ』は“悪い子”とレッテルを貼られた孤独なはみ出し者たち(リロとスティッチ)の物語でもある。彼らがお互いにぴったりの親友を見つける、それだけでも十分胸に響くのだ。そしてやはり、大人だからこそ、本作で「自分がいると家族を壊してしまう」とリロたちから離れようとするスティッチの背中が、より切なく感じてしまう。

 また、本作はナニがリロの面倒を見るために自分の夢を諦めようとする、という点に重きが置かれていた。以前は海洋生物学の分野で進学を薦められるほど、優秀だったナニ。やりたいことも、進みたい大学もあるが、今はそんなことを言っていられない。ヤングケアラーに近い立ち位置で描かれるからこそ、バイト探しも最終的に「自分がもともと好きなことをやってみては」とデイヴィッドが助言したり、トゥトゥが大学への進学を諦めさせないようにしたりと、周りが彼女のやりたいことを応援する。アニメーション版では描かれなかった、実写版だからこそのナニを取り巻く描写も、大人だからこそ刺さる要素ではないだろうか。

なぜ日本でも大ヒット?

 さて、本国のアメリカではもちろん、日本でも初登場で首位を獲得するヒットぶりの『リロ&スティッチ』。その背景に、もともと『リロ&スティッチ』の日本人気が非常に高いことも関係しているだろう。1994年の『ライオン・キング』以降、ディズニー・アニメーション映画は『ポカホンタス』や『ノートルダムの鐘』、『ヘラクレス』に『ムーラン』、『ターザン』に『ダイナソー』、『ラマになった王様』や『アトランティス/失われた帝国』など、作画のタッチも内容も、少し大人向けで“ザ・マスコットキャラ”が不在の作品が続いた。そこで『リロ&スティッチ』が公開され、ブームが起きたのである。2000年初期のディズニー・スタジオを救った作品としても有名だ。

 そんな経緯もあり世界的に『リロ&スティッチ』は人気だったのだが、日本ではもっと人気だった。実際、2008年から放送されたテレビアニメ『スティッチ!』(テレビ東京系)はなんとウォルト・ディズニー・ジャパンが製作した、つまり日本発のシリーズなのだ。しかも長年にわたって愛され、複数シーズン放送された。これにより、『リロ&スティッチ』は“ディズニー・アニメーション史上最も続編が作られた作品”となったのだ。

 そんな『リロ&スティッチ』が実写版として、再び日本の映画館で上映されている。キャラクターとしての人気の高さ、様々なレガシーを感じさせるキャスティングに明るい作風、愛らしいスティッチやリロの物語……本作のヒットは“必然”だったと言っても過言ではないだろう。

「リロ&スティッチ」吹替版特報60秒|6月6日(金)劇場公開!

■公開情報
『リロ&スティッチ』
全国公開中
キャスト:クリス・サンダース(スティッチ役)、マイア・ケアロハ(リロ役)
監督:ディーン・フライシャー・キャンプ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

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