実写版『リロ&スティッチ』は大人でも感動できる? 日本でも大ヒットの理由

実写版『リロ&スティッチ』が絶好調だ。全米では同日公開の『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』を抑えて3週連続首位を獲得。日本では6月6日に公開され、6月8日までの週末3日間で興行収入5億6300万円、観客動員38万866人を記録した。公開初日の劇場の様子について、シネマイクスピアリの湯口支配人は「我々の予想以上に、20~30代のお客様に多くご来場いただいており、上映後は涙で目をうるませて出てくる方もいらっしゃいます。世界中で大ヒットしているように、ファミリー層だけにはとどまらない大きなヒットが日本でも期待できるのではないでしょうか」とコメントしている。
2003年に公開された同名ディズニー・アニメーション映画を実写化した本作。基本的な設定やストーリーは引き継がれながらも、新しい展開やショットも多く、フレッシュな印象だった。アニメーション版に馴染みがある人にとっても、新鮮な気持ちで観られる映画となっている。
レガシーを大切にしつつ、新たな選択へ
では、一体何が引き継がれ、何が新しくなっているのか。特筆すべきは吹替版で観た時の声優陣の存在感だ。スティッチの声を務めるのは、アニメーション版に引き続き山寺宏一である。字幕版も、アニメーション版の監督・脚本・原案を務めたクリス・サンダースが続投している。続投といえば、三ツ矢雄二が再びプリークリーに声を吹き込んでいるのは、アニメーション版のファンとしても非常に嬉しい。
また、“違う形”での続投も多い本作。アニメーション版でリロの姉ナニを演じたティア・カレルは本作のオリジナルキャラクターである社会福祉士のケコア役で登場。同じくオリジナルキャラで、リロとナニの家の隣に住むデイヴィッドの祖母トゥトゥを演じるエイミー・ヒルもまた、映画やアニメシリーズで青果店を営むハセガワ・リンの声を担当してきた。また、ナニが働くバイト先「ルアウ」のマネージャーを演じるジェイソン・スコット・リーも、アニメーション版でデイヴィッドを演じている。
“レガシー”の観点で、本作全体に感じられるハワイアンカルチャーのリプレゼンテーションにも触れておきたい。アニメーション版のオープニングにも使われた「He Mele No Lilo」を歌い、作曲の一部も担当したマーク・ケアリイ・ホオマルが22年ぶりに本作に参加。地元の児童合唱団と一緒に「He Lei Pāpahi No Lilo a me Stitch」を歌った。加えて、劇伴にはタヒチアンドラムが使用されている。そして、吹替版ではTravis Japanが歌うエンディング曲の「バーニング・ラブ」は、ブルーノ・マーズがプロデュースした甥っ子の2人組ザイヤ・リズムとナイジャ・ミュージアムが歌う。監督のディーン・フライシャー・キャンプは「豊かな歴史的文化をもつハワイの物語なので文化との結びつきを持つ人が関わっていることが重要だった」と語っている。
一方、“新しい選択”にも注目したい。リロ役は、ドラマ『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)で保育園時代の主人公を演じたことで認知度を一気に上げた子役の永尾柚乃が演じている。オリジナル版でリロを演じるマイア・ケアロハの愛くるしさに、少しマセていて、それでも子供らしいかわいさがある永尾の声色が非常にマッチしていた。そしてナニ役には、ガールズ・グループ・ME:IのメンバーであるMOMONA(ハワイ好きのご両親が名づけた「MOMONA」という名前は、ハワイ語で「愛しさ」を意味する)が大抜擢。本作が声優初挑戦であるが、アメリカのオーディションで歌唱力を含め高く評価されている。また、ナニに寄り添うデイヴィッド役は吹替版エンディングも担当するTravis Japanの中村海人が担当。Travis Japanといえば、『ライオン・キング:ムファサ』のスカー役で吹替声優デビューを果たした松田元太の演技力の高さが話題になっていたが、中村にとっても本作が声優初挑戦の場となっている。本作は、そんなふうにオリジナルキャストを再キャスティングしつつ、新しい才能を発掘するような作品だ。






















