『ジョン・ウィック』新作『バレリーナ』北米公開で見えた課題 『リロ&スティッチ』がV3

『バレリーナ』北米公開で見えた課題

 実写版『リロ&スティッチ』強し。6月6日~8日の北米映画週末ランキングは、3週連続で『リロ&スティッチ』が首位を守った。週末興収は3250万ドルで、前週比マイナス47.4%と変わらず堅調。北米興収3億3579万ドル、世界興収7億7259万ドルと、まずは8億ドル突破が直近に迫っている。

『リロ&スティッチ』©2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 これに敗れたのが、『ジョン・ウィック』シリーズ初のスピンオフ映画『バレリーナ:The World of John Wick』だ。北米3409館で週末興収は2500万ドル、R指定のアクション映画として見れば決して悪くないものの、シリーズでは下から2番目のオープニング興収となった。

 問題は、ライオンズゲートが本作に課していたハードルがもう少し高かったことだ。本作は3週間前の段階で興行収入3500万ドルが期待されており、この通りになっていれば『リロ&スティッチ』を破って首位発進だったのである。ところがその後、予測値は3000万ドルに下方修正され、現実の数字はそれよりも低かった。前週の『ベスト・キッド:レジェンズ』と同じ現象である。

 いったい何が起きているのか……と過剰にシリアスになる必要はない。端的に言えば、『ベスト・キッド:レジェンズ』も『バレリーナ』もスタジオ側が期待したほどの求心力をそなえていなかったのである。『コブラ会』に熱狂したファンは新たな主人公に関心を示さず、キアヌ・リーブスのアクションを愛する観客はアナ・デ・アルマスが主演の新たなストーリーにさほど注目しなかったのだろう。

『バレリーナ:The World of John Wick』®TM&©2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

 Deadlineは興味深い分析をしている。『バレリーナ』の数字は近年の女性アクション映画では悪くなく、『マッドマックス:フュリオサ』(2024年)の2632万ドルや『アリータ:バトル・エンジェル』(2019年)の2852万ドルに比肩するものだと。アイコニックな男性主人公のフランチャイズから派生した女性スピンオフとして、本作はポジションも興行の苦戦も『フュリオサ』と似ている。女性主人公のガンアクション映画が配信プラットフォームでいくつも製作されている今、宣伝レベルでうまく差別化できなかった可能性もありそうだ(たとえジョン・ウィック=キアヌ・リーブスが予告編に登場していても)。

 もっとも、実際に映画館へ足を運んだ観客からは高い評価を得ており、Rotten Tomatoesでは批評家スコア75%に対して観客スコアは93%。映画館の出口調査に基づくCinemaScoreでは「A-」と、前作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023年)には及ばないものの、2作目・3作目と同等の評価を得ている。

 製作費は9000万ドルと控えめで、しかも報道によると海外配給権の売り上げが予算の大部分をカバーしているという。したがって劇場興行で稼ぎ出すべき金額は大手スタジオのフランチャイズ映画よりも低そうだが、現時点で北米の最終興収は8000万~9000万ドルとの予測。現時点で海外興収は2600万ドル、こちらの数字をいかに伸ばせるかも問題だ。

『バレリーナ:The World of John Wick』®TM&©2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

 確かに言えるのは、本作がフランチャイズの分岐点となりうることだ。ライオンズゲートはドニー・イェンが主演・監督を務めるスピンオフ映画や、前日譚を描くアニメーション映画も企画中。これらを『ジョン・ウィック』第5弾までのつなぎにする以上、逆に言えば、スピンオフによってシリーズのブランド性を損なうわけにはいかないのである。

 日本公開は8月22日。『ジョン・ウィック』人気の高い日本では、北米公開で見えてきた課題を克服することができるか?

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