『キャスター』『侍タイムスリッパー』 山口馬木也が体現し続ける俳優としての“誠実さ”

そんな山口が次に演じているのは、日曜劇場『キャスター』(TBS系)に登場する新聞記者・松原哲。阿部寛演じる主人公・進藤壮一の亡き父という設定だ。すでに故人である彼は、過去の回想や進藤の内面において姿を現す。直接的なセリフや見せ場が少ない中で、どれだけ存在感を残せるかが問われる役どころだ。物語の中心にあるのは、42年前に起きた自衛隊機の墜落事故とその隠蔽工作。そして、松原がそれを追っていた過程と死の真相が、現在の進藤の“報道哲学”を形成する重要な原点となっている。つまり、山口が演じる松原という人物は、ストーリーの背骨とも言える存在だ。故人であるがゆえに複数の役割を背負ったこの役に、山口はどのような厚みをもたらしていくのか。観る側の期待は否応なしに高まる。

『侍タイムスリッパー』で“武士としての真実”を生き抜いた男を演じた山口が、今度は“記者としての真実”を命を懸けて追い求めた父を演じる。それは偶然ではなく、山口の役への誠実な姿勢が、作品ごとに“真実を貫く人間”という共通項を呼び寄せているようにも思える。
山口の俳優人生は、決して派手な道のりではなかった。だが、一作の力で風向きは変わる。『侍タイムスリッパー』が多くの人に届いたのは、特別な広告展開でも、巧妙な仕掛けでもない。誠実に役と向き合った演技が、観客の心に届いたからだ。その延長線上にあるのが『キャスター』であり、そして2026年放送予定のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』で演じる柴田勝家という新たな挑戦でもある。織田信長の重臣として知られる“鬼柴田”は、まさに山口が長年積み上げてきた強さと誠実さの両立を存分に発揮できる役どころだろう。
俳優とは、なにかを“上手に演じる”ことではなく、そこに“どう存在するか”を問われる存在なのかもしれない。山口馬木也という俳優が放つ存在感を目の当たりにすると、まさにその答えを静かに示してくれているようだ。その存在感は、決して大きな声や派手な感情表現によって成り立っているわけではない。むしろ、語られない部分の余白や、ふとした沈黙の中にこそ重みが宿る。画面に映るたびに、山口が演じる人物の人生が自然と想像できてしまうのは、役を生き抜くという覚悟と、その人間の輪郭を丁寧に掘り下げているからだろう。だからこそ、今作『キャスター』でも故人としてのリアリティを、山口はきっと、その静かな佇まいで体現してくれるはずだ。
テレビ局の報道番組を舞台に闇に葬られた真実を追求し悪を裁いていく社会派エンターテインメント。圧倒的な存在感で周囲を巻き込んでいく型破りで破天荒な主人公・進藤壮一が、視聴率低迷にあえぐ報道番組『ニュースゲート』を変えていく。
■放送情報
日曜劇場『キャスター』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:阿部寛、永野芽郁、道枝駿佑、月城かなと、木村達成、キム・ムジュン、佐々木舞香、ヒコロヒー、山口馬木也、黒沢あすか、堀越麗禾、馬場律樹、北大路欣也(特別出演)、谷田歩、内村遥、加藤晴彦、加治将樹、玉置玲央、菊池亜希子、宮澤エマ、岡部たかし、音尾琢真、高橋英樹
脚本:槌谷健、及川真実、李正美、谷碧仁、守口悠介、北浦勝大
音楽:木村秀彬
プロデュース:伊與田英徳、関川友理、佐久間晃嗣
演出:加藤亜季子、金井紘
©TBS
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