国内アニメーション映画祭、なぜ続々と新設される? 第1回「ANIAFF」から分析

新しいアニメーション映画祭が日本に誕生する。12月12日から17日まで開催の「第1回あいち・なごやインターナショナル・アニメーション・フィルム・フェスティバル」(ANIAFF)は、名古屋駅前の映画館などで国内外のアニメーション作品を上映したり、クリエイターによるイベントを行ったりするものだ。日本には北海道の新千歳空港や広島市、新潟市でアニメーション映画祭が開催されており、東京でも「東京アニメアワードフェスティバル」(TAAF)や東京国際映画祭が開かれている。ANIAFFが加わることで日本のアニメーション界に何が起こるのか?
「アメリカや韓国は実写映画、フランスやイタリアはファッションやグルメがポップカルチャーのフラッグシップになっている。日本は漫画でありアニメが国をけん引するフラッグシップ。名古屋でそういった環境をプレゼンテーションできれば」

6月2日に開催されたANIAFFの発表会見で、フェスティバル・ディレクターを務める井上伸一郎はこう話して、ANIAFFの誕生が日本の文化や産業に果たす役割をアピールした。
井上は、2023年から始まった新潟国際アニメーション映画祭のフェスティバル・ディレクターとして活動し、長編のアニメーションが中心という世界でも珍しい映画祭を、3年で高い注目を集めるものへと育てた。アニメ誌の『月刊ニュータイプ』(KADOKAWA)編集長を務め、KADOKAWA副社長としてアニメ文化の発展に携わった経験や人脈を活かして、ANIAFFもアニメファンなら目を向けざるを得ない映画祭に仕立て上げてくれそうだ。
映画祭は多くの場合、作品を関係者から映画ファンまで広い人に観てもらい、世界での上映から次の作品作りに繋がるような機能を果たす目的で開かれる。ANIAFFも、世界から作品を募り上映する予定。アーティスティック・ディレクターを務めるジャーナリストの数土直志は、40分以上の長編アニメーション映画を対象に作品を募る国際コンペティション部門、国内外の話題の新作を上映する招待上映部門、監督やスタジオにフォーカスした企画を展開する特集上映部門といったプログラムを紹介した。
VR(仮想現実)やAI(人工知能)といった新しいテクノロジーが使われたアニメーションを紹介するニューウェーブ部門、著名な監督なりゲストが登壇する基調講演部門、そして「批評」「クリエイティブ」「企業連携」をテーマにアニメーションを顕彰するセミナー/カンファレンスプログラム部門の開催も予定している。
「地元の人が来てくれないと盛り上がらない」(数土)という考えから、舞台なり作り手が名古屋という地と関わりを持つ作品も上映して、街おこし的な盛り上がりも目指したいとのこと。今回、愛知県と名古屋市が共催に入っているのは、そうした期待があってのものと言えそうだ。他には、アニメの作り手が企画をプレゼンテーションして出資を仰ぎ、製作へと持っていく「ピッチ」と呼ばれるプログラムも実施して、次代のクリエイターや作品が世に出る手助けを行う。
ANIAFFでもメインとなるコンペティション部門を持つ新アニメーション映画祭は、すでに日本でいくつも開催されている。ANIAFFが加わることで林立状態に拍車がかかりそうだが、一方でそれぞれに特長を打ち出すことで、棲み分けはできるといった見方もある。




















