いつ誰が観ても視聴者を魅了する 『るろうに剣心』が描いていた“令和”の主人公像

アニメ『るろうに剣心』が27年ぶりに新作アニメーションとして帰ってきた。『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』は、1994年から1999年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載され、1996年に初のTVアニメ化、1997年に劇場版を公開、そして1999年以降3作のOVAが発売され、5度にわたるアニメ化を果たした、和月伸宏による同名漫画を原作に、多くのファンを魅了した歴史的名作だ。
しかし筆者は、その放送開始時にはまだ生まれていなかった世代で、佐藤健主演の実写映画シリーズを通じてその存在を知り、世界観に魅了された一人である。同様に、実写作品や舞台などで『るろうに剣心』の存在を知りながらも、アニメには触れてこなかった層は少なくないのではないだろうか。

原作者の和月伸宏も「当時の作品って、今の若い子はなかなか観るきっかけがない。だから、改めて今の技術で新しい『剣心』を作ってもらえれば、そこから知ってくれる人も出てくるし、前のアニメを観てくれていた人も改めてイチから楽しんでもらえるんじゃないかな」(※1)と語っているように、今、その魅力が世代を超えて再び多くの人々に届けられようとしている。
3月まで放送されていた『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』第二期「京都動乱」を通して気づかされたのは、本作がなぜ今もなお多くの人々の心を捉えて離さないのか、という理由だ。それは主人公・緋村剣心が、90年代にすでに今日的なヒーロー像を体現していたからかもしれない。
1990年代半ばの『週刊少年ジャンプ』では、『ドラゴンボール』『ジョジョの奇妙な冒険』『幽☆遊☆白書』など、黄金期を代表する作品が並んでいた。それに対して数百人もの人命を奪ってきた過去を持つ主人公の物語は、その時代の多くの読者がまだ見たことのない大胆な挑戦だったはずだ。
2000年代以降、『コードギアス』シリーズや『DEATH NOTE』、さらには『東京喰種トーキョーグール』や『チェンソーマン』のように、暗い過去や複雑な背景を持つ主人公を描いたヒット作が次々と生まれている。もちろん「明るく強い」正統派ヒーローも健在だが、その一方で、重めの事情や内面に葛藤を抱えながら前に進むキャラクターたちが作品の中心を担うことも、もはや珍しくなくなった。
そんな現代的なヒーロー像の萌芽を、程度の差こそあれ、『るろうに剣心』は四半世紀も前に描いていたことに、今更ながら驚かされる。明治維新という国家の転換点に生き、その罪を背負いながらも不殺の誓いを貫く剣心の姿は、原作漫画にアニメ、実写に舞台と、メディアや国境すらも超えて多くの人の心を掴んできた。

第二期「京都動乱」では、不殺を誓っている剣心の前に、誓いを揺らがせるような困難が次々と立ちはだかる。不殺の誓いを守るか、戦うか。なとりとの共同制作でオープニング主題歌を手がけたキタニタツヤが「2つの選択で板挟みになって惑う情けなさもまた美しい人間の姿だと感じて歌にした」(※2)と語っているように、この苦悩と葛藤こそが京都編の核心といえる。令和の『るろうに剣心』が描く、心の中に巣食う迷いや弱さ、それでも前に進もうとする剣心の姿は、27年の時を経た今も、観る者の心を強く揺さぶってやまない。





















