『あんぱん』“寛”竹野内豊は最期まで良き“父”であり続けた “生きる道”示した嵩への遺言

『あんぱん』嵩の“生きる道”示した寛の遺言

 地域の人から頼りにされる町医者だった寛。その思いに応えるようにひたすら働くうちに疲労が蓄積されていたのだろう。おそらく御免与町には寛の他に医者と呼べる人はいないのではないだろうか。ましてやまだ医療が十分に整っていない時代。寛は倒れてからあっという間にこの世を去ってしまった。

 血の繋がりに関係なく愛情を持って育ててくれた寛の死に目に立ち会えず、放心状態で「ごめんなさい」と呟くことしかできない嵩に千代子は「寛さんは、怒ってなんかいませんきね」と語りかけ、その最期を伝える。寛がまだ生死を彷徨っていたとき、「嵩さん、きっともうすぐもんてきてくれますき」と励ました千代子。しかし、寛は「今頃卒業制作、必死に頑張りゆうがやろ。わしが邪魔してどうするがな」と返し、「最後まで描き上げんと、半端でもんてきたりしよったら……半端でもんてきたりしよったら、殴っちゃる」と弱々しくその拳を掲げた。

「嵩が決めた道や。嵩の生きる道や。投げ出すがは許さん」

 それが、寛の嵩に残した“遺言”だった。人も物もすべて国のために捧げることが正義とされた戦時下において、自由を忘れない嵩の心や作風は寛の下で育まれたもの。けれど、同時に自由には責任が伴うことを嵩は寛から教わった。その教えを貫いた嵩。「寛さんと嵩さんは、やっぱり心が通じ合うちょったがやね」という千代子の言葉を受け、その目からとめどなく涙が溢れる。寛は最期の最期まで、厳しくも温かい愛のある人だった。人は亡くなってから49日は魂がこの世に漂っているとされている。きっと、寛もあの優しい笑顔で「よう頑張ったにゃぁ」と嵩の頭を撫でてくれているのではないだろうか。

 一方、朝田家では次郎(中島歩)と婚約が決まったのぶ(今田美桜)の祝言の準備が進められていた。卒業制作が完成したら、のぶに思いを伝える決心をしていた嵩は再び絶望を味わうことになる。

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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