『赤かぶ検事奮戦記』は法廷ドラマの先駆者だった フランキー堺の柊茂は今も色褪せない

ここで『赤かぶ』の製作陣に目を向けてみよう。全5話の監督を務めた瀬川昌治は、1960年代から多くの喜劇映画を撮っており、フランキー堺の主演映画『喜劇 “夫”売ります!!』(1968年/東映)、『喜劇 男の泣きどころ』(1973年/松竹)を監督しているため、息もバッチリ。『赤かぶ』シリーズを制作した山内久司、プロデューサーの桜井洋三、さらに撮影、照明、助監督から脚本家に至るまで、主要スタッフの大半はテレビ時代劇『必殺』シリーズを手がけている手練れの面々である。これは『必殺』シリーズを作っている朝日放送と京都映画が『赤かぶ』の制作および制作協力になっているためだが、『赤かぶ』キャストの沖雅也、森田健作ともに、『必殺』シリーズのレギュラー経験者であり、フランキー堺も『必殺仕事人』のテレビスペシャルに後々出演するという、人の縁でそれぞれ繋がっている。法で裁けぬ悪党を始末する時代劇と、殺人者を法で裁く現代劇のスタッフが同一という点もユニークである。

毎回のドラマは、森田健作演じる若き警部補とフランキー演じる赤かぶ検事がコンビで事件の謎に挑み、逮捕された容疑者を弁護する沖雅也の法眼弁護士が、法廷で検事と対決する展開がメインだ。第4話「呪いの紙草履」のみ、岐阜県の小さな村で起きた男女の愛憎劇が中心で、裁判所のシーンは僅かだが、人の業の深さと女の情念にスポットをあてた異色作なので必見。この第4話で法眼が「今度の裁判では人の殺意について裁くことになるでしょう。しかし、人間の心の中の物を規制するということは絶対にできない」と柊に語っており、どれだけ法が整備されようとも、人間の心の闇だけは第三者にどうにかできるものではない、という難題を視聴者に突きつける深いエピソードである。
2000年代以降は木村拓哉主演『HERO』(フジテレビ系)や、堺雅人と新垣結衣が凸凹コンビの弁護士に扮した『リーガル・ハイ』(TBS系)、松本潤主演『99.9 -刑事専門弁護士-』(TBS系)など、法廷ドラマはいろいろと思い浮かぶが、『赤かぶ』は法廷もの連続ドラマの先駆け的な作品であった。現代の目で見ると、そりゃあ検事が首を突っ込む仕事じゃなくて警察の領分でしょうという部分もあるが、そこはご愛敬。フランキー堺をはじめとする芸達者なレギュラー陣と、藤木孝、梅津栄、飛鳥裕子らゲストが織りなす罪と罰のドラマ。テレビで放送される機会がほとんどない作品だけに、この貴重な機会に是非とも観ていただきたい。
■放送情報
『赤かぶ検事奮戦記』
CSホームドラマチャンネルにて、5月15日(木)〜5月21日(水)平日6:00〜放送
出演:フランキー堺、春川ますみ、倍賞千恵子、森田健作、沖雅也
原作:和久峻三
脚本:北村篤子ほか
監督:瀬川昌治ほか
1980年/全5話
©松竹
番組詳細ページ:https://www.homedrama-ch.com/series/8362
『赤かぶ検事奮戦記II』
CSホームドラマチャンネルにて、5月22日(木)スタート 毎週平日6:00~放送
出演:フランキー堺、春川ますみ、片平なぎさ、森田健作、勝野洋、栗田洋子
原作:和久峻三
脚本:吉田剛ほか
監督:貞永方久 ほか
1981年/全13話
©松竹
番組詳細ページ:https://www.homedrama-ch.com/series/8543






















