『あなたを奪ったその日から』偽りの未来の代償は？　無戸籍の子どもの課題に光を当てる

　「業が深い」という手垢のついたフレーズで済ませたくはないが、どうしてこんなことにと思いながら、紘海の一挙手一投足に引き込まれる自分がいる。立場を超えて、もし自分が同じような状況に置かれたら、やはり同じように悩むかもしれない。秘密を抱えた後ろめたさといけないことをしている自覚を、視聴者は共有する。紘海と私たちは共犯者なのだ。

　母性と復讐。2つを結びつける因果応報という言葉。娘の命が人為的な要因で奪われたなら、その報いは人の手でなされなくてはならないのか。酔った江身子が言う「自分には母性がない」という言葉が、紘海の胸に深く刺さる。他人の子どもを奪って育てる自分は、いったい何なのか。対照的に、失踪から時間が経っても萌子の死亡届を出さない結城は、どこかで娘が生きていることを信じているのか。親としてどちらが正しい姿だろうか？

　愛情と執着の境目はどこにあるのか。守らなくてはならないと本能が命じるとき、それは愛情と呼べるのか。本当に守りたいのは母である自分で、幸福であることに執着しているだけではないか。そもそも、二つの間に線が引けるかもわからなくなってくる。

　引き返せない道を進む紘海を、私たちはじっと見守るしかない。それでも作中で時は過ぎ、親子となった紘海と美海（一色香澄）は幸せな日々を過ごす。そんな日々にも、過去は音もなく忍び寄って……。玖村（阿部亮平）の再登場、結城との再会はどんな波乱を呼ぶだろうか。先の読めない展開が続きそうだ。

■放送情報
『あなたを奪ったその日から』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00～22:54放送
出演：北川景子、仁村紗和、平祐奈、阿部亮平（Snow Man）、水澤紳吾、小川李奈、一色香澄、田山由起、内藤秀一郎、原日出子、鶴田真由、大浦龍宇一、中原丈雄、筒井道隆、大森南朋
脚本：池田奈津子
演出：松木創
企画：水野綾子
音楽：村松崇継
主題歌：back number「ブルーアンバー」（ユニバーサル シグマ）
プロデューサー：三方祐人
制作：カンテレ、共同テレビ
©︎カンテレ
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