劇場版『名探偵コナン』はなぜ毎年盛り上がれるのか? 『隻眼の残像』から考察

映画『名探偵コナン』が毎年盛り上がる理由

 1つ目の理由としてあげたキャラクターのインパクトの強さはわかりやすい特徴だ。本作の大和なら片目の傷痕、諸伏ならひげ、常時メインキャラクターの蘭なら通常有り得ない髪型などが顕著な例で、そういった特徴はしっかりと描くが、実は表情や顔の美麗さを常に細かく描いているわけではない。

 しかし、風景や建物は別だ。本作の舞台である長野の劇中風景は壮観である。例えば長野に元太たちが下車してすぐに見る冬の八ヶ岳や途中捜査中の皆が集まる善光寺等を、リアリズムを意識して描かれており、観ていて楽しい。また、野辺山宇宙電波観測所のパラボラアンテナやアンテナを積んだ車はストーリー上、そこまでディテールを描かなくても支障がないはずだが、細部の構成までしっかりと観ることができ映像として楽しめるように仕上がっている。

 さらに追求してみると、本作で鍵を握る銃も映像として面白い。大和が使う少し古いリボルバーもわざわざ緊迫している最中に装填シーンが挿入されている上、クライマックスで小五郎が銃を撃つシーンもライフルの弾とは異なるリボルバーの弾として描かれているように見受けられた。

 このように映像として楽しめる点に目を向けると、一見しただけでは見落としているかもしれないものが多いことに気づく。ストーリーがわかっている分、今度は集中して画だけを追ってみようとリピーターになる人も少なくないはずだ。

 この映像美としての劇場版『名探偵コナン』は毎年クオリティを下げることなく続いている。その安心感も人気を博する要因だろう。

 まとめると、名探偵コナンの映画が人気を博する理由の考察として「キャラクターのわかりやすさ」と「ディテールの凝った映像」をあげた。この2つは『無限城編』の公開を控える『鬼滅の刃』にも共通しているように思う。こちらも大人気の作品で、このことから2つの要素は集客として重要な項目といえるだろう。2026年には神奈川県警の登場が示唆されている。今回紹介した要素を持ちながら、さらに飛躍するのか必見だ。

■公開情報
劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(せきがんのフラッシュバック)』
全国東宝系にて上映中
キャスト:高山みなみ(江戸川コナン)、山崎和佳奈(毛利蘭)、小山力也(毛利小五郎)、林原めぐみ(灰原哀)、高田裕司(大和敢助)、速水奨(諸伏高明)、小清水亜美(上原由衣)、岸野幸正(黒田兵衛)、草尾毅(安室透)、飛田展男(風見裕也)、鮫谷浩二(平田広明)
原作:青山剛昌『名探偵コナン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
監督:重原克也
脚本:櫻井武晴
音楽:菅野祐悟
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
製作:小学館/読売テレビ/日本テレビ/ShoPro/東宝/トムス・エンタテインメント
配給:東宝
©2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
公式サイト:https://www.conan-movie.jp/

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