『キャスター』スポーツ賭博をめぐる闇は明かされたか? 真実を左右する影響力の武器

『キャスター』真実を左右する影響力の武器

「見たもの聞いたものをバカ正直に受け取り、その裏に何が潜んでいるか想像すらしない」

 第1話で進藤が華(永野芽郁)に投げた言葉だ。今井が海外へ高飛びすることは小池がつかんでおり、名和とADの本橋(道枝駿佑)が空港にいたことはそれで説明がつく。名和はアランが今井だとすぐ気づいたと語ったが、それはいつからだったのか。今井は「機械が苦手な彼(名和)に代わってスマホの操作をしました」と自白する。この言葉も取りようによっては、名和の指示で賭博をしていたように響く。ディレクター梶原(玉置玲央)の「小池はギャンブル好き」という発言もあった。

 アランこと今井が八百長だけでなく、名和の口座に入金されたオンラインカジノもやっていたとして、カジノの負け分は、スポーツベッティングの儲けで多少なりともまかなえたはずだ。ここから浮上するのは、名和と今井、小池を含む関係者が口裏を合わせて、今井に罪を着せた可能性である。その隠ぺいに進藤も一枚噛んだのではないか。

 このことを間接的に示すのが、官房長官の羽生(北大路欣也)から進藤が受け取った官房機密費だ。第2話中盤の羽生と尾崎の会話で、機密費が大会を成功させるために使われたことが暗示される。海外では「権限が届かない」という言葉も飛び出した。権限外ということは羽生の影響力が及ばないことを意味するが、警察の追及も及ばないと解釈することもできる。進藤が語ったように、影響力が重要な現代において、金や情報を駆使して影響力をどう演出するかが物事の成否を握る。良くも悪くも。

 以上はあくまで仮説にすぎない。けれども、このように考えるだけの余白を本作は持っている。喉の奥に刺さった小骨のような釈然としない気持ちは、こうした含みがもたらすものだろう。ドラマが人の手によって編集される以上、これは意図的なものである。素直に受け取れば見過ごしてしまう真実。それを知りうるすべを私たちは持ちあわせていない。そのことを無言のうちに伝える第2話だった。

 コンサルの尾崎(谷田歩)の大阪・関西万博報道へのアンサーのような発言、羽生が逝きほくそ笑むJBN会長の国定(高橋英樹)の魂胆、因縁に満ちた進藤の過去など伏線がちりばめられた今作。第3話では、あの事件を想起させるキャラクターも登場するということで、早くも次週が楽しみである。

『キャスター』の画像

日曜劇場『キャスター』

テレビ局の報道番組を舞台に闇に葬られた真実を追求し悪を裁いていく社会派エンターテインメント。圧倒的な存在感で周囲を巻き込んでいく型破りで破天荒な主人公・進藤壮一が、視聴率低迷にあえぐ報道番組『ニュースゲート』を変えていく。

■放送情報
日曜劇場『キャスター』
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:阿部寛、永野芽郁、道枝駿佑、月城かなと、木村達成、キム・ムジュン、佐々木舞香、ヒコロヒー、山口馬木也、黒沢あすか、堀越麗禾、馬場律樹、北大路欣也(特別出演)、谷田歩、内村遥、加藤晴彦、加治将樹、玉置玲央、菊池亜希子、宮澤エマ、岡部たかし、音尾琢真、高橋英樹
脚本:槌谷健、及川真実、李正美、谷碧仁、守口悠介、北浦勝大
音楽:木村秀彬
プロデュース:伊與田英徳、関川友理、佐久間晃嗣
演出:加藤亜季子、金井紘
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/caster_tbs/
公式X(旧Twitter):@caster_tbs
公式Instagram:caster_tbs
公式TikTok:@caster_tbs

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