前田敦子、国民的トップアイドルから“実力派女優”に 『人事の人見』で示す確かな積み上げ

前田敦子、国民的アイドルから“名脇役”へ

 “国民的トップアイドル”というイメージから、ジャンルや規模を問わず様々な映像作品で活躍する“女優”としてのキャリアを着実に積み続けている前田敦子。4月8日にスタートしたドラマ『人事の人見』(フジテレビ系)でもヒロインとして新たな一面を見せてくれている。

『人事の人見』©︎フジテレビ

 前田はAKB48の絶対的エースとして人気絶頂だったタイミングから、着々と演技力も発揮しはじめ、ドラマ『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』(フジテレビ系)のようなアイドルらしさを前面に出した役柄だけでなく、映画『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』『クロユリ団地』やドラマ『花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス~2011』(フジテレビ系)などホラーからラブコメまで多様な作品で主役に抜擢された。

 記憶を遡ってみると、筆者が女優・前田敦子をしっかりと認識したのはドラマ『Q10』(日本テレビ系)だった。佐藤健演じる男子高校生・平太と親しくなる転校生ロボットに扮しており、無表情でずっと棒読みというキャラクターにもかかわらず違和感なく、むしろ物語に入り込ませてくれる力があった。

 また、映画『イニシエーション・ラブ』で演じた、ストーリーの肝になるヒロイン繭子と前田のイメージが合致していたのも鮮明に覚えている。本作の前半では主人公の“鈴木”と繭子の出会い、後半では倦怠期を迎えて別れの危機に陥るまでが描かれるが、最後まで話を追っていくと衝撃的な事実が発覚する。映画公開当時のCMなどでも“どんでん返し”が強調されていたが、そのキーパーソンとなるのが繭子なのだ。どことなく掴みきれない美女という役柄と、前田自身の高嶺の花のような存在感が相乗効果を発揮し、原作小説とはまた異なる面白さを生み出していた。

 さらに、映画『コンビニエンス・ストーリー』でも、本心が掴めないが独特な魅力を持つ惠子を演じた前田。山奥にやって来た加藤(成田凌)がふらっと入ったコンビニ「リソーマート」の従業員で、人妻でありながら加藤と良い関係になるのだが、それを知った夫(六角精児)は2人を執拗に追い詰める。意識が朦朧としたまま見る夢のような、現実なのかわからないおかしな出来事が続く本作で、存在しているのかすら疑いたくなってしまうような女性像が良く似合っていた。映画『不死身ラヴァーズ』でも何度も“甲野じゅん”(佐藤寛太)に恋するヒロイン・りの(見上愛)のバイト先の先輩として、変わった世界観の中にいたことも記憶に新しい。

『コンビニエンス・ストーリー』©︎2022「コンビニエンス・ストーリー」製作委員会

 そんな不思議な世界観が似合う前田だったが、近年では、自分事としても見ることができるような一般的な女性像も好演している。美大出身の同級生3人が悩みを打ち明け合いながら毎日同じ釜の飯を食べる、等身大のアラサーの姿を描くドラマ『かしましめし』(テレビ東京系)では、パワハラに耐えかねてデザイナーの会社を辞め、料理にストレスをぶつける千春として弱さを見せる瞬間が印象的だった。また、自閉スペクトラム症のありす(門脇麦)が営む食堂を舞台にした『厨房のありす』(日本テレビ系)では、元ヤンで第3子妊娠中のありすの親友・和紗役に。前田自身とも重なる母親らしさはもちろん、ありすを守ろうとする頼もしさが垣間見えて、また違った前田の姿を見ることができる作品だった。作品の顔としてだけでなく、メインキャラクターをどっしりと支える役柄としてもその実力を発揮している。

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