パク・ジフンが“天性のアイドル”から一変 『弱いヒーロー』で見せた陰鬱さと秘めた暴力性

『弱いヒーロー』パク・ジフンの新境地

 Netflixで4月25日よりシーズン2の配信を控える韓国ドラマ『弱いヒーロー』。本作のシーズン1が、続編の公開を前に3月25日よりNetflixで世界配信され、ふたたび大旋風を巻き起こしている。公開後1日で世界ランキング3位となり、初週では2位で670万視聴数を記録、70カ国でトップ10入りを果たした。日本でも1位の座に何度もつき、現在も上位をキープしている。

 同名のWEBマンガが原作の本作は、2022年11月18日に公開されるやいなや旋風を巻き起こし、シンドローム級の人気を博した。米Forbesが選ぶ「2022年最高の韓国ドラマ20」にも選出された世界的ヒット作品だ。主演を務めるのは、元Wanna Oneメンバーのパク・ジフン。1999年5月29日生まれ、現在25歳のパク・ジフンは、2006年にMBCドラマ『朱蒙』で子役としてデビュー。その後、『キムチチーズスマイル』『王と私』『イルジメ〜一枝梅』などで活躍し、2017年にMnetの公開オーディション番組『PRODUCE 101 シーズン2』で、Wanna Oneとしてデビューを果たした。その後は、『コッパダン〜恋する仲人〜』『恋愛革命』『遠くから見ると青い春』と立て続けにドラマに出演し、主役級俳優へと歩みを進める中、本作『弱いヒーロ―』では、キラキラしたアイドル姿を封印し、暴力に立ち向かう高校生役を怪演している。

 パク・ジフン演じるヨン・シウンは、ビョクサン高校に通う全校1位の秀才だ。高校1年生のシウンは、勉強以外に興味がなく、友人も作らずに黙々と勉強をしていた。そんなシウンを目の敵にする不良グループたち。不良グループのリーダー、ヨンビン(キム・スギョム)は、シウンが自分に屈しないことに腹を立て、転校生のボムソク(ホン・ギョン)を脅してシウンを陥れる。

 冒頭から驚かされるのは、パク・ジフンの圧倒的な演技力だ。「天性のアイドル」と呼ばれるパク・ジフンは、公開オーディション時に、そのキラキラした瞳や、少女漫画から抜け出してきたようなルックスから、「練習生が選ぶビジュアルセンター」1位に選ばれたほどのまばゆいオーラを放っているのが特徴的だ。そのパク・ジフンが、登場した瞬間から、死んだ魚のような目でじっとりとした憂鬱なオーラを纏って登場したのだ。アイドルのオーラを完全に消し去り、まるで世界を恨んでいるかような陰鬱さを全身から放っている。そのパク・ジフン演じるシウンが、突然感情を爆発させ、思いっきり殴る表情とその勢いは我々を一気に『弱いヒーロー』の世界に引きずり込む。ここから先、どんなことが待ち受けているかもわからない視聴者はシウンに感情移入させられ、彼の行く末を固唾をのんで見守らずにはいられない展開となるのだ。

 物語が始まる前のオープニングがまた秀逸だ。ゆったりとした音楽、モノクロのスローモーション、気だるげな雰囲気、学生服の背後から輝く太陽の光、ライターの炎、背を丸めて疲れきった表情で機械的に歩む生徒たち。ストーリー性のあるオープニングに、彼らが抱える抑圧された苦悩が伝わってくるようで胸が詰まる。本作のクリエイティブディレクターは、『D.P. ー脱走兵追跡官ー』(以下、『D.P.』)を演出したハン・ジュニ監督が務めているため、随所に『D.P.』を感じさせる演出が見られる。オープニングもそのひとつで、ライターの炎や(『D.P.』では使い捨てライター、本作ではジッポライター)背後から輝く太陽など、共通点の多い演出となっている。また、両作品とも音楽監督は、韓国で有名な音楽プロデューサーPrimaryが担当しており、物語の世界観にグッと引き込む劇伴も素晴らしい。

 『D.P.』では、軍隊での不条理な暴力性を描き、Netflixを通じて世界配信されたことで、韓国が抱える問題を大きく知らしめた作品となった。本作では、同じく「不条理な暴力」を主題として描き、これまでの学園ドラマの定石を超えたものとなっている

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