“カカシ先生”井上和彦が声の魅力光る奉行役に 『べらぼう』を支えるベテラン声優たち

“カカシ先生”井上和彦が『べらぼう』に参戦

 そして次に登場したのは鳥山検校(市原隼人)と瀬以(小芝風花)に罪状を申し渡すシーン。ここでも奉行らしく2人に対して厳しい語気で接することは変わらないのだが、その声の裏には優しさが感じ取れた。「悪徳なる検校の寵をよいことに、善良なる民より絞り取りし金で遊興、勢の限りを尽くしたことは許し難き悪行である」と迫るものの、「しかしながら、幼き頃に吉原に売られ……」と瀬以の身の丈を思う口上では一変して語気に人情を滲ませる。この緩急の具合が見事だった。

 結局、瀬以はほぼ罰せられない結果となり、鳥山は瀬以のためを想い離縁を申し出るなど『べらぼう』ならではの“粋”が感じられた展開となったが、奉行所にて自由に話すことのできない2人の想いを奉行の口上が代弁していたのだ。数分程度の短いシーンながら、一連の粋な演出は井上がほぼ声によってのみで支えていた。

 近年、実写ドラマや映画に声優が演者として出演するのはよくあること。たとえば、先日最終回を迎えた1月期月9ドラマ『119エマージェンシーコール』(フジテレビ系)には毎週各話に山口勝平、神谷浩史、野沢雅子ら豪華声優陣が登場。そして、現在放送中のNHK連続テレビ小説『あんぱん』には、アニメ『アンパンマン』チーズ役などで知られる山寺宏一が、ヒロイン・のぶの夫である嵩が通う芸術学校の教師・座間晴斗役で出演していたりもする。関にとって大河ドラマは『鎌倉殿の13人』に続く2度目の出演であるし、日々公開されていく実写の作品クレジットに声優の名前が並ぶのはもはや珍しいことでもない。これらは声優業で培われた技術・才能を買われての抜擢となるわけだが、こと『べらぼう』においては、井上が果たした役割はとりわけ大きかったと言えるだろう。

参照
※ https://www.heike2025.com/

■放送情報
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』
総合:毎週日曜20:00〜放送/翌週土曜13:05〜再放送
BS:毎週日曜18:00〜放送
BSP4K:毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:横浜流星、小芝風花、渡辺謙、染谷将太、宮沢氷魚、片岡愛之助
語り:綾瀬はるか
脚本:森下佳子
音楽:ジョン・グラム
制作統括:藤並英樹
プロデューサー:石村将太、松田恭典
演出:大原拓、深川貴志
写真提供=NHK

 

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる