『セッション』ジャスティン・ハーウィッツが語る、デイミアン・チャゼルへの絶大な信頼

ジャスティン・ハーウィッツにインタビュー

 2014年にアメリカで公開され大ヒットを記録、第87回アカデミー賞では5部門にノミネートされ、J・K・シモンズの助演男優賞を含む3部門で受賞したデイミアン・チャゼル監督の『セッション』が、4K & DolbyAtmosのデジタルリマスターで蘇る。『セッション デジタルリマスター』として4月4日から日本公開を迎えることを記念して、音楽を手がけたジャスティン・ハーウィッツにインタビュー。チャゼル監督の初監督作から最新作まで、全作品の音楽を手がけてきた彼に、『セッション』への思いやチャゼル監督との関係性について話を聞いた。

デイミアン・チャゼル監督としか組まない理由とは?

ーー『セッション』の全米公開から11年が経ちました。いま改めて『セッション』という作品を振り返っていかがですか?

ジャスティン・ハーウィッツ(以下、ハーウィッツ):デイミアン(・チャゼル)とは学生の頃から一緒に映画を作っていましたが、『セッション』はロサンゼルスでプロのスタッフたちと初めて一緒に作った、まさに僕たちにとっての“真の1本目の映画”でした。作ったときはあそこまで話題になるとは夢にも思っていなかったのですが、サンダンス映画祭でのグランプリと観客賞のW受賞を皮切りに、僕たちが想像していた以上に大きな作品になっていって、本当にあっという間に時が過ぎ去っていく感覚でした。少しシュールな感じもありましたね。

ーーあなたとデイミアン・チャゼルのタッグは、1作目の『Guy and Madeline on a Park Bench(原題)』から現時点での最新作『バビロン』まで途切れることなく続いていますよね。そもそもデイミアン・チャゼルが監督を務め、あなたが音楽を手がけるという作業の分担はどのような経緯でスタートしたんですか?

ハーウィッツ:僕自身も不思議なのですが、自然にそういうかたちになったんです。僕が19歳、大学2年生の時点で、デイミアンの作品の音楽は自分がやることになっていました。それ以降の作品も、彼から「音楽をやってくれないか?」と聞かれることはないんです。やるのは当然として進んでいくんですよ。つい先日、次の作品の撮影はいつごろになるかというような連絡はありましたけど(笑)。

ーーでは2人のタッグは当然のようにこの先も続いていくわけですね。

ハーウィッツ:そうですね。“クリエィティブにおける結婚”とでも言えるかもしれません。彼との仕事は安心感もありますし、この先何年も続いていくと思います。僕はデイミアンとの仕事がものすごく好きなので、他の映画監督と一緒に仕事をしたこともないんです。自分に合うような作品が出てきたり、いい監督との出会いがもしあれば可能性はゼロではありませんが、僕はただデイミアンの作品の音楽を今後も手がけていければ、それだけで十分です。

ーー他の監督からオファーが届いたりはしないんですか?

ハーウィッツ:オファーをいただくこともあるのですが、自分がやりたいという気持ちになるような作品がないんです。特別なフィルムメーカー、特別な作品でなければ、おそらくやる気にならないと思います。

ーーあなたにとってデイミアン・チャゼル監督がどれだけ重要な存在かよく理解できました。そこまで絶大な信頼を寄せる彼の魅力はどこにあるのでしょう?

ハーウィッツ:デイミアンはとても幅広く、いろんな才能を持ってもいるんです。まずストーリーテラーとして抜きん出ていて、セリフにもものすごく彩りがあり、そして記憶に残るものが多い。撮影においても、カットの割り方がすごいですよね。撮影の半年以上前から全ての画コンテを準備するくらい、プランニングが綿密です。僕がデモ音源を聞かせると、そのビートに合わせたカメラの動きをすぐに画コンテに書き込むぐらい、“どう演出すればいいか”が頭の中にある。『セッション』のように、ビートを刻んでいくような魅せ方もできる技術を持っている監督ではありますが、やはり彼のストーリーテリングとビジュアルセンスは本当に素晴らしいと思います。

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