『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』が最高のエンタメ映画である理由 チョン・ヘインの狂気も必見

『ベテラン』続編が最高のエンタメ作品な理由

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、参鶏湯大好き柴が『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』をご紹介します。

『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』

 「正義中毒」という言葉をご存知だろうか。「正しさ」を盾に人を罰することに快感を覚えてしまう状態を指す。不倫をした有名人を執拗にバッシングしたり、不祥事を起こした人の住所を特定して拡散したり……。残念ながら、昨今のSNSでは珍しくないことである。今回はそんな「正義中毒」や、「正しさ」を大義名分に暴走する人々をテーマにした『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』をオススメしたい。

 本作は2015年に公開された『ベテラン』の10年ぶりとなる続編で、『モガディシュ 脱出までの14日間』(2021年)や『密輸 1970』(2023年)で知られるリュ・スンワン監督が手がけたアクション映画だ。ベテラン刑事のソ・ドチョルと、彼が所属する「広域捜査隊」のメンバーが世間を騒がせる「ヘチ」を追う。

 「ヘチ」とは伝説上の生き物を意味する。善悪を判断すると言われ、見た目は狛犬に近い。作中における「ヘチ」は、司法では裁けない、もしくは法の報いが不十分であるとされる人物を容赦無く殺して回るダークヒーローだ。正体は不明で、人々から熱狂的な支持を得ている。

 そんな「ヘチ」を追う主人公ドチョルを演じるのは、ファン・ジョンミン。そして個性豊かな広域捜査隊のメンバーにはオ・ダルス、チャン・ユンジュ、オ・デファン、キム・シフが名を連ねている。

 私はこの広域捜査隊のメンバーが大好きで、特に気に入っているのがチャン・ユンジュ演じるミス・ボンだ。捜査隊の紅一点でありながらも犯人に容赦無く飛び蹴りを喰らわせ、潜入捜査ではタチの悪いセレブを演じきる。大車輪の活躍を見せながらも、普通の人間らしさも併せ持つ彼女は魅力的で、第1作でチーム長に「外国語を勉強しろ」と言われても「じゃあ休みをくださいよ」と即座に言い返す場面は何度見てもクスッと笑ってしまう。

 1作目では殺人をもみ消す巨大企業との対決、今作では法を超えて悪人を罰するダークヒーローとの対峙と、なかなかにヘビーな問題を扱いつつも、作品全体の空気が重くなりすぎないのは、彼らの存在が中和剤となっているからだ。

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