フジテレビ、広告主離れと番組制作への影響は? 清水賢治社長の「企業風土改革」を占う

清水専務は再生・改革プロジェクト本部の中に作った再発防止・風土改革ワーキンググープでフジテレビのあり方など再生・改革に向けたテーマで議論・検討を行ったり、社員と対話してフジテレビの課題を挙げてもらったりして、「人権リスクの解決に向けた仕組み・姿勢が弱い」「コンプライアンスの不徹底」「組織風土・企業文化の問題」「ガバナンスの脆弱性」といった課題を抽出。これらの解決に向けた企業風土改革やガバナンス強化に取り組んでいく方針を打ち出した。
こうした改革の結果、フジテレビが送り出す番組がこれからどうなっていくかが気になる点だ。「企業風土改革」の中で「全社横断的な対話を通じた『フジテレビらしさ』の再確認・再定義」を行うこと、「未来を見据えた人的資本経営戦略」の中で「経験とデータを活かした意思決定の高度化(スタジオ機能《制作・開発》とプラットフォーム機能(放送・配信・流通)の最適化を推進」を打ち出している。直接的な番組内容への言及ではないが、ハラスメントを生み出すことにも繋がった、情実や権力を背景とした編成方針の中で存在していたかもしれない制約が、改革の中で改善されて現場が望み視聴者が求める番組が、以前より作りやすくなる可能性はある。

3月27日に発表したフジテレビジョンの人事では、取締役会における監督機能と業務執行機能の分離を明確にするため、本格的な執行役員制度を導入して大勢の執行役員が誕生した。報道・総合報道戦略担当の常務施行役員を始めアニメ事業担当執行役員、バラエティ制作、ドラマ映画制作・情報制作担当執行役員など、各ジャンルに執行役員が立つ形となってそれぞれに番組制作に取り組めるようになった。
編制方針もあるためすべてのジャンルが対等という形にはならないが、過去の功績を元にした上意下達による編制方針の決定といったプロセスが薄れていけば、勢いのあるジャンルがスピーディな意思決定の下で番組作りに取り組めるようになり、結果として視聴者の支持を集めるようなことも起こるかもしれない。「未来を見据えた人的資本経営戦略」の中で挙げられている「戦略的人材配置と評価精度の最適化」や「時代に適応するスキル開発の強化」が実践されるなら、番組制作の面でもより時代に即応したものが生まれてくるような変化が起こるかもしれない。

当面は調査報告書の中でアラタに発覚したハラスメントへの対処もあって人事的な見極めも必要となるが、打ち出された施策がしっかりと運用されていることが分かってくれば、離れたスポンサーも評価を改め、番組に対する提供も行ってくれるようになる。そこまでの道筋をどのように付けるかが、新たにFMH社長となりフジテレビジョン社長も兼ねる清水氏の腕の見せどころとなりそう。その後は、刷新され風通しも良くなった会社の中で新しい人材がどれだけ才能を発揮するかで、低迷が続くフジテレビへの支持も持ち直していくことだろう。






















