北村匠海ほど“闇堕ち”が似合う俳優はいない 『悪い夏』佐々木守に惹かれる理由

そもそも、なぜ人は闇堕ち属性に魅せられるのだろうか。“闇堕ち”の魅力は、単にキャラクターが悪に染まる過程だけでなく、その内面に潜むダークサイドに共感することから来ているように思う。
例えば、『呪術廻戦』の夏油傑のようなキャラクターを考えてみると、その本質が見えてくる。彼はもともと呪術師として弱き者を守る理想を抱いていたが、任務の中で繰り返される理不尽な現実や、親友・五条悟との決定的な価値観の違いによって次第に追い詰められていく。そして、ある出来事をきっかけに「非術師は皆殺し」という極端な思想へと至り、完全に“闇堕ち”してしまうのだ。

しかし、夏油が魅力的なのは、単に悪に堕ちたからではない。その道を選ばざるを得なかった彼の苦悩や、それでも消えなかった迷い、かつての仲間との関係性が生々しく描かれているからこそ、観る者の心を強く惹きつけるのではないか。むしろ、人間の心に宿る矛盾や葛藤こそが、闇堕ちキャラクターの最大の魅力なのかもしれない。『悪い夏』における北村匠海の演技も、まさにその“闇堕ち”の魅力を体現している。映画館という暗闇の中で、その美しくも痛ましい変貌を目撃したとき、きっと“闇堕ち”の扉が開かれるはずだ。
■公開情報
『悪い夏』
全国公開中
出演:北村匠海、河合優実、伊藤万理華、毎熊克哉、箭内夢菜、竹原ピストル、木南晴夏、窪田正孝
監督:城定秀夫
脚本:向井康介
原作:染井為人『悪い夏』(角川文庫/KADOKAWA 刊)
制作プロダクション:C&I エンタテインメント
製作:クロックワークス/KADOKAWA/C&I エンタテインメント
配給:クロックワークス
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