我らがニコケイ、殺人鬼役で全開! 『ロングレッグス』で披露した過去最高レベルの異常者度

『ロングレッグス』ニコラス・ケイジがヤバい

 断言するが、本作のニコケイは全開である。異常者演技に定評がある人物だが、今回の異常者度は過去最高レベルだろう。プロデューサーも兼任しているせいか、リミッターが外れた感がある。特殊メイクを駆使して、見た目は完全な別人だ。そして監督は、ニコケイの取り扱いについてはマイカ・モンローとは真逆の発想をしたのだろう。ほとんど顔を映さないのだ。これは、その一挙手一投足だけで異常性が表現できるという、ニコケイへの信頼に他ならない。そして、その信頼にニコケイは完璧以上に応えている。たとえ全身が映らなくても、観客は「絶対に関わりたくないタイプの人間が画面をウロウロしている」と、謎の緊張感を覚えること必至だ。しかし、それでいてちゃんと声はニコケイであり、ニコケイだと認識できるから凄い。メチャクチャをやっているようで、ツボは外さないのが流石である。さらにパンフレットによれば、ニコケイはこんな離れ業を披露したという。ニコケイが大声を出すシーンで、その声が収録機器の最大値ラインのピッタリに収まっていたのだ。その最大値からほんの少しでもはみ出すと、実際に使うのが難しいそうで、現場の音響スタッフは「こんなの見たことがない」と驚愕したという(なおパンフレットでは、他にも監督らの細かいこだわりが多く語られているので、お好きな方には購入をオススメしたい)。

 ただしストーリーのほうは確実に好みが別れるだろう。いわゆるサイコな狂人一代記を期待すると「そっちかぁ」感は出るだろが、オカルト映画として臨めば、きっと最後の最悪なオチに思わずトゥーサムズアップであろう。そろそろ日差しも暖かくなり、町がどこか嬉しく騒ぎ出す季節。こうなってくると、逆に嫌な気分になりたい日もあるはずだ。そういう方には、陰鬱で荒涼で、しかしエネルギッシュな本作をオススメしたい。本作の凄いニコケイを見れば、きっと何かと頑張れる気がしてくるはずである。

■公開情報
『ロングレッグス』
全国公開中
出演:マイカ・モンロー、ニコラス・ケイジ、ブレア・アンダーウッド、アリシア・ウィット
監督・脚本:オズグッド・パーキンス
配給:松竹
2023年/アメリカ/英語/101分/シネスコ/カラー/5.1ch/原題:Longlegs/日本語字幕:牧野琴子/PG12
©MMXXIII C2 Motion Picture Group, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/longlegs/

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