『オズの魔法使い』はどう映画化されてきたか? 『ウィキッド ふたりの魔女』との繋がり

映画『ウィキッド』のキャスティングが祝福する多様性

映画『オズの魔法使』は、その主題歌「虹の彼方に」がゲイアンセムとして知られ、レインボーフラッグの由来となったと言われるほどゲイカルチャーとの関わりが深い。この精神は映画『ウィキッド ふたりの魔女』にも受け継がれていると言っていいだろう。
特に注目したいのは、本作のキャスティングだ。グリンダ役のアリアナ・グランデは、兄がゲイであることから、以前からLGBTQコミュニティへの支援を積極的に行っている。フィエロ役のジョナサン・ベイリーとグリンダの友人ファニー役のボーウェン・ヤンはゲイの俳優だ。エルファバ役のシンシア・エリヴォはバイセクシャルであることを公表しており、さらにこれまでミュージカル『ウィキッド』の長い歴史のなかでも、黒人の俳優がエルファバを演じたことはなかった。また、ネッサローズ役のマリッサ・ボーディは実生活でも車椅子ユーザーだ。このキャスティングは、もちろん俳優の実力をもっとも重視しながら、本作が多様性を歓迎する姿勢を示していると見て良いのではないだろうか。

『ウィキッド』はエルファバとグリンダがお互いの違いを超えて友情を結び、ともに大きな敵に立ち向かっていく物語だ。大きなことを成し遂げるには、さまざまな属性の人々が違いを認めあい、協力しあわなければならない。そんなメッセージを持つ物語において、キャストの多様性は重要だったと言えるだろう。
さらに『オズの魔法使い』が必修に? 続編の注目ポイント
続編『Wicked: For Good(原題)』は、2025年11月に全米公開が予定されている。この作品では、魔法使いとマダム・モリブル(ミシェル・ヨー)の企みを知ったエルファバは彼らと戦うことを誓い、一方のグリンダは別の方法で問題を解決できないか奔走することになる。そのほかのキャラクターたちの動向にも注目だ。

グリンダの恋人となったフィエロだが、彼は明らかにエルファバを気にかけていた。一方、ネッサローズとカップルになったボック(イーサン・スレイター)は、本当にグリンダへの想いを断ち切ったのだろうか。そしてエルファバを「ザ・ウィキッド=悪い魔女」だと糾弾するマダム・モリブルの声明を複雑な表情で聞いてたネッサローズは、姉を信じることができるのだろうか。
『Wicked: For Good』では、いよいよドロシーがオズの国にやってきて、彼女の冒険の裏で起こっていたことが明かされる。続編で描かれるのは、1つの物事でも、視点を変えれば違うものが見えてくるということだ。あのときオズの国で“本当は”なにが起こっていたのか。よく歴史は勝者の物語だと言うが、ここで語られようとしているのは、ある意味では「敗者の物語」ということになるだろう。続編は本作以上に『オズの魔法使い』を知っていたほうが楽しめるものになると思われる。『ウィキッド』再鑑賞の際には、ぜひここで紹介した『オズの魔法使い』からの引用にも注目して、続編に備えてほしい。
■公開情報
『ウィキッド ふたりの魔女』
全国公開中
出演:シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョナサン・ベイリー、イーサン・スレイター、ボーウェン・ヤン、ピーター・ディンクレイジ、ミシェル・ヨー、ジェフ・ゴールドブラム
日本語吹替版キャスト:高畑充希、清水美依紗、海宝直人、田村芽実、入野自由、kemio、ゆりやんレトリィバァ、塩田朋子、大塚芳忠、山寺宏一、武内駿輔ほか
日本語吹替版スタッフ:三間雅文(台詞演出)、蔦谷好位置(音楽プロデューサー)、高城奈月子(歌唱指導)、吉田華奈(歌唱指導)
監督:ジョン・M・チュウ
製作:マーク・プラット、デヴィッド・ストーン
脚本:ウィニー・ホルツマン
原作:ミュージカル劇『ウィキッド』/作詞・作曲:スティーヴン・シュワルツ、脚本:ウィニー・ホルツマン
配給:東宝東和
©Universal Studios. All Rights Reserved.
公式サイト:https://wicked-movie.jp/





















