『おむすび』麻生久美子が見せた圧巻の芝居 “ドラマの必然性”はらむ愛子の糸島帰還

『おむすび』麻生久美子が見せた圧巻の芝居

 子育てを終えて夫婦水入らずで暮らす愛子にとって、同じような立場の佳代は義理の母から友達の距離感になっていたことは呼び方(「佳代さん」)の変化からわかる。親しく呼びかける愛子に対して、佳代は「私の大事な娘」と返す。「娘」というワードを耳にして、愛子にこみ上げるものがあったのはそれなりの理由があった。

 断片的に切り取られてきたものの愛子の過去はあいまいである。名古屋出身の愛子は聖人と出会い、駆け落ち同然で家を出たため実家と絶縁状態である。結たち三世代の前で愛子は「家族の温かみを知らない私にみんなが家族の大切さを教えてくれてた」と感謝する。その上で「自由にやるのって意外としんどくなかった?」と話を向けて、我が身を振り返った。

 個人的に愛子は帰る場所を探していたと感じる。ギャルの先駆けのような愛子は、家族というよりどころを見つけた。愛子に励まされて歩(仲里依紗)と結はなりたい自分を実現した。娘たちの幸福は愛子の幸福でもあったが、家族を優先するとできないこともあったはずだ。周囲のことを考えながら、最終的に自分にとって何が幸せか直感し、踏み出す愛子を見て胸が熱くなったのは筆者だけではないだろう。大仕事をやり遂げた麻生久美子に最大限の称賛を贈りたい。

 逡巡する聖人の背中を押すのは孝雄(緒形直人)である。「俺ら職人は道具さえあったらどこでも仕事できる」は、腕を磨くことで人生を切り開く二人だから響く台詞だ。一つの場所に根を張る農業とノマド的な業種をさりげなく対比していた。真紀(大島美優)の死を昇華してからの孝雄はふっきれたように自らの可能性を追求しており、本作のギャルマインドを誰よりも体現しているのが孝雄かもしれない。

■放送情報
連続テレビ小説『おむすび』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:橋本環奈、佐野勇斗、仲里依紗、北村有起哉、麻生久美子、新津ちせ、大島美優
語り:リリー・フランキー
主題歌:B'z「イルミネーション」
脚本:根本ノンジ
制作統括:宇佐川隆史、真鍋斎
プロデューサー:管原浩
写真提供=NHK

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