『おむすび』が可視化した医療従事者の視点のコロナ禍 結が噛み締めた“当たり前”

『おむすび』が描く医療従事者視点のコロナ禍

 『おむすび』(NHK総合)第23週「離れとってもつながっとうけん」で描かれたのはコロナ禍。第22週で菜摘(田畑志真)と結(橋本環奈)がコンビニ弁当開発をしていたのが遠い記憶に感じてしまうくらいに、濃密で、暗く、つらい1週間でもあった。震災とは違って誰もが当事者であること、それにまだ記憶に新しいということも“つらい”という共感を覚えるポイントだったように思う。

 特徴的なのは、医療従事者の視点から見たコロナ禍を描いているということ。陽性スペースをレッドゾーン、医療スタッフが防護服の脱衣を行う場所をイエローゾーン、それ以外をグリーンゾーンと、ゾーニングと呼ばれる区分け作業を説明した上で、レッドゾーンが戦場のような状況であることを見ると、改めてあの時の恐怖が蘇ってくるとともに、医療従事者への敬意を表さなければと思わせてくれる。

 当時、そんな医療従事者に浴びせられたのが、「コロナまみれ」という心無い言葉。花(宮崎莉里沙)も医療従事者の子供ということから、“コロナいじめ”に遭っていた。塚本(濱田マリ)は結にスカウトを受けていたフォーチュンストアへの転職も家族を守る選択としてあることを提案する。

 家族から離れひとりになり、誰もいない街で病院へ向かい、仕事に日々向き合い、帰宅したら疲れ果てて眠る――。出口の見えない暗いトンネルを進んでいくような不安な日々。そこに光を当ててくれたのが、歩(仲里依紗)のようなポジティブに前を向く人々。すっぴんで髪がボサボサな結をリモート越しに見た歩は、おしゃれして元気を出せと言いながら、動画配信を通じてそのメッセージを多くの人々に伝えることを思いつく。思い立ったが吉日。悩みを抱えていてもこの瞬間を大切に生きようとする、ポジティブな歩の“ギャル魂”が、見た人の日常にささやかな活力をもたらしていく。自分たちのやり方で。そう信じながら、一人ひとりが未来に向かって行った先に、我々が生きる今がある。言われのない罵詈雑言や偏見を浴びながらも、結たち医療従事者にはたくさんの感謝のメッセージも届いていた。

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