『トワイライト・ウォリアーズ』“龍兄貴”ファンにオススメしたい ルイス・クー出演作8選

配信で観られるルイス・クー出演作8選

『エレクション 黒社会』/『エレクション 死の報復』

『エレクション 死の報復』©2006 PEARL HEART LIMITED. All Rights Reserved.

 ジョニー・トー監督作にして、香港映画史に残る名作のひとつと言えば間違いなく『エレクション』2部作だろう。香港の黒社会における選挙制度と権力闘争を描いた香港ノワールで、『柔道龍虎房』がロマンチックな映画なのに対し、『エレクション』2部作は同じ監督から出力されたとは思えないほどドライな死と暴力の黒社会映画だ(無論通底する視線はあるが)。そして『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』が変わりゆく現在の香港を九龍城砦に重ね合わせているように、『エレクション』2部作も黒社会の選挙制度を通じて大陸に飲み込まれつつある香港の姿を描いている。

 『エレクション 黒社会』も傑作だが、ルイス・クー演じるジミーに焦点を当てた『エレクション 死の報復』は特に圧倒されるような面白さを誇る。ジョニー・トー監督が何故巨匠と呼ばれるか。陳腐な言い方をすると、すごくて面白い映画を撮るからである。そしてその“すごくて面白い映画”のひとつが『エレクション 死の報復』だ。

 先述した通り「必見!」という言葉を使うつもりはないが、『エレクション 死の報復』で越えてはいけない一線を越えるルイス・クーの酷薄な美しさは本当に沢山の人に観てほしい。

『コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝』

 ルイス・クーは演技うますぎ男なので善玉であれ悪玉であれ強烈な印象を残すのだが、『コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝』に出てくる悪玉のルイス・クーは特に強烈なインパクトを放つ。

 『コネクテッド』のベニー・チャン監督が手掛けた本作は『七人の侍』および『荒野の七人』にリスペクトを捧げた作品であり、数多にある「脅威に晒される小さな田舎町を有志の戦士たちが守る」という作品群の一つだが、こと「悪役の存在感」に関しては他の作品と一線を画す。

 『コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝』のルイス・クーは「偉い人の息子で浅慮かつワガママで衝動的に悪事を働くカスの小悪党」という割とあるキャラクター造形の究極である。本来ならストレスフルなキャラクター造形だがルイス・クーはこれを徹底的に極めることによって魅力が反転し、忘れがたい怪物として異形の存在感を放つ。

 香港映画は基本的に字幕で観る派だが『コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝』に関しては吹替版もおすすめしたい。ルイス・クーの吹替を多く担当する小山力也氏の熱演がルイス・クーの怪演と絶妙なケミストリーを起こしており、より怪物じみた存在感を放っている。

 また、ド畜生すぎるルイス・クーを除いても『コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝』はベニー・チャン監督らしい熱血パワフルな勧善懲悪映画であり、エディ・ポンやラウ・チンワン、ウー・ジンなどの台湾、香港、中国の大スターが終結したオールスター的映画であり、これまたサモ・ハンが手掛けるアクションも見ごたえ抜群の娯楽映画だ。このリストの中でもかなり見やすい部類の作品なのではないかと思う。

『未来戦記』

『未来戦記』
『未来戦記』Netflixにて配信中

 『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』を観てルイス・クーを知った人の元へ、このような情報が流れてきたことはないだろうか? 「ルイス・クーはオタクである」と。はいはい、ルイス・クーがオタクって言っても香港映画界の大スターだし、実際どんなものかわかったものではない。そう考えたあなたにお勧めしたい作品がSFアクション超大作『未来戦記』である。

 ルイス・クーが『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』に出資した製作会社「天下一電影」の社長であることは知っている人も多いと思うが、実はVFX会社の社長でもある。つまり『未来戦記』はルイス・クーが製作してルイス・クーが主演し、おまけにルイス・クーの会社がVFXを担当したルイス・クー謹製のSF超大作なのである。

 「自分が石油王だったらこのような作品を作りたい」という妄想はオタクなら誰であれしたことがあると思うが、それを実際にやったのが『未来戦記』と言える。しかも石油を掘るような一発逆転的な手段ではなく、目標を見据えてコツコツと。『未来戦記』は香港を代表する大スターにして製作会社の社長であるルイス・クーが、自分の持ちうる力全てを使い実現させたオタクの夢ムービーなのだ。

 自分の夢を全力で叶えまくっているルイス・クーの姿に微笑ましさ全開だが、同時にこの映画は「香港でSF超大作をやる」という決意を刻み付けた覚悟の映画でもある。当時の香港歴代興行収入記録を更新した本作は『未来戦記(原題:明日戰記)』というタイトル通り、香港の未来を見据えた力強い作品だ。

 以上となるが、紹介しきれなかった作品がいくつもあり、忸怩たる思いだが上記に列挙した作品に興味を持っていただけたのなら幸いだ。なお、繰り返すが今回のリストは個人的、かつ配信限定のものであり、さらには尺の関係上紹介できなかった作品もある(『ホワイト・ストーム』とか)。また、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』を観て興味を持ってくれた人向けでもあるため、アクションに特化したものとなっている。そのため「なぜ自分のお気に入りのあの映画がないのか」といったクレームは適切ではない。そもそもこのリストにあなたのお気に入りの映画が無いことは大した悲劇ではない。最初に言ったようにこのリストは香港映画の世界に触れるためのきっかけとなることを目的としたものであり、もしあなたが新しく香港映画に触れた人々を「無知蒙昧である」と見下していないのであれば、きっとあなたの好きな香港映画に辿り着けると信じられるはずだ。

 そして新しく香港映画に触れてくれた皆様はこれから香港映画を観るにあたって、古いファンからの知識をひけらかすような苦言、小言を気にする必要はない。映画はそれをはじめから最後まで観た時点であなたのものであり、同時に誰のものでもないだから。

■公開情報
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』
全国公開中
出演:ルイス・クー、サモ・ハン、リッチー・レン、レイモンド・ラム、フィリップ・ン
監督:ソイ・チェン
監督:谷垣健治
音楽:川井憲次
配給:クロックワークス
2024年/香港/125分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/原題:九龍城寨之圍城/PG12
©2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved.
公式サイト:https://klockworx.com/movies/twilightwarriors/
公式X(旧Twitter):@totwjp

 

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる