アカデミー賞の“受賞予想”はどう行われるのか? 試金石となる前哨戦とサプライズを解説

稀に起きるサプライズ
ただし、稀にサプライズが起きる。
『アルゴ』(2012年)のベン・アフレックはゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞、クリティクス・チョイス・アワード、アメリカ監督組合賞などを受賞し、監督賞の最有力候補とみなされていたがアカデミー賞ではまさかの監督賞候補落ちだった。同作は作品賞を受賞したが、監督賞候補にならず作品賞を受賞した作品は『つばさ』(1927年)、『グランド・ホテル』(1932年)、『ドライビング Miss デイジー』(1989年)、『グリーンブック』(2018年)、『コーダ あいのうた』(2021年)と同作の6本しかない。この年はキャスリン・ビグローが『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012年)でベン・アフレックと前哨戦を争っていたが、彼女もまさかのアカデミー賞では監督賞候補落ちだった。同年は本命不在のまま、アン・リーが二度目の監督賞を受賞している。
『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』(2021年)で助演男優賞候補になったラキース・スタンフィールドもサプライズの例である。彼は主要な前哨戦では全く名前が挙がらなかったが、アカデミー賞ではサプライズの候補入りを果たした。結果は前哨戦で圧勝だった共演者のダニエル・カルーヤが順当に助演男優賞を受賞したが、前哨戦で全くと言っていいほど名前が挙がらずアカデミー賞の演技部門で候補入りした例を筆者は他に知らない。
最後に、今年の作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞の候補リストを挙げておこう。
・作品賞
『ANORA アノーラ』
『ブルータリスト』
『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』
『教皇選挙』
『デューン 砂の惑星PART2』
『エミリア・ペレス』
『I’m Still Here』
『ニッケル・ボーイズ』
『サブスタンス』
『ウィキッド ふたりの魔女』
・監督賞
ジャック・オディアール(『エミリア・ペレス』)
ショーン・ベイカー(『ANORA アノーラ』)
ブラディ・コーベット(『ブルータリスト』)
コラリー・ファルジャ(『サブスタンス』)
ジェームズ・マンゴールド(『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』)
・主演男優賞
エイドリアン・ブロディ(『ブルータリスト』)
ティモシー・シャラメ(『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』)
コールマン・ドミンゴ(『シンシン/SING SING』)
レイフ・ファインズ(『教皇選挙』)
セバスチャン・スタン(『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』)
・主演女優賞
シンシア・エリヴォ(『ウィキッド ふたりの魔女』)
カーラ・ソフィア・ガスコン(『エミリア・ペレス』)
マイキー・マディソン(『ANORA アノーラ』)
デミ・ムーア(『サブスタンス』)
フェルナンダ・トーレス(『I’m Still Here』)
第97回アカデミー賞授賞式は、現地時間3月2日、米ロサンゼルスのドルビーシアターで開催される。





















