『御上先生』はなぜ“安心”して観ることができるのか 現実の問題を穿つ制作陣の強い意志

『御上先生』はなぜ“安心”して観れる?

 神崎は、自身の父親が新聞記者であることから、日本には記者クラブが存在することを語る。記者クラブは、国会や警察に置かれており、マスコミはそこからの公式発表を待って、横並びの記事を出していることを指摘する。実際にもそのようなシステムは存在している。御上もそれを受け、「日本の報道の自由度はG7の中で圧倒的に最下位」であることを語る。

 また、御上は是枝文香(吉岡里帆)と会話する中で、有名な学園ドラマが始まるたびに、日本中で学級崩壊が起こっていることを指摘する。その背景には、ドラマの影響で、熱血教師以外は教師にあらずという空気が作られてきたことがあるという。御上は良い教師像を考え直さないといけない、学校も官僚も前例主義すぎるから、リビルドしないといけないと語るのだった。

 このように問題提起をして結論はゆだねるというタイプのフィクションは、観ていて不安になることがある。しかし、随所に御上のゆるぎない考え、もっといえば倫理観が示されているからこそ、安心して観ることができる。

 第1話で御上が、「真のエリートが寄り添うべき他者とは、つまり弱者のことだ」というセリフが存在することで、御上の意図が見えずとも、間違った道に生徒たちを引きずりこむことはないだろうと思える。

 一方、こうしたドラマは、「変わらない」ことがリアルであるような結末になることが多い。それは、これまでの日本では、変えようとする人がいても、現実を変えられなかったということが圧倒的に多いことが関係しているのだろう。果たして、このドラマがどうなるのか、希望の持てる結末がどう用意されているのかを最後まで見届けたい。

『御上先生』の画像

日曜劇場『御上先生』

「日本の教育を変えてやろう」という熱意を持ったエリート文科省官僚が高校教師となり、令和の18歳とともに、日本教育にはびこる権力争いや思惑へ立ち向かうオリジナル学園ドラマ。

■放送情報
日曜劇場『御上先生』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:松坂桃李、奥平大兼、蒔田彩珠、窪塚愛流、吉柳咲良、豊田裕大、上坂樹里、髙石あかり、八村倫太郎、山下幸輝、夏生大湖、影山優佳、永瀬莉子、森愁斗、安斉星来、矢吹奈子、今井柊斗、真弓孟之、西本まりん、花岡すみれ、野内まる、山田健人、渡辺色、青山凌大、藤本一輝、唐木俊輔、大塚萌香、鈴川紗由、芹澤雛梨、白倉碧空、吉岡里帆、迫田孝也、臼田あさ美、櫻井海音、林泰文、及川光博、常盤貴子、北村一輝
脚本:詩森ろば
脚本協力:畠山隼一、岡田真理
演出:宮崎陽平、嶋田広野、小牧桜
プロデュース :飯田和孝、中西真央、中澤美波
教育監修:西岡壱誠
学校教育監修:工藤勇一
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/mikami_sensei_tbs/

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