細田佳央太は“少年漫画の主人公” 時代を生きる若者としてのリアリティは唯一無二の表現に

細田が演じると、どの役も現実に存在しているような気になる。『七夕の国』で演じた“ナン丸”こと、南丸もそうだ。本作は、岩明均による同名コミックを原作に、東北の山間にある架空の町・丸神の里の当主が、触れたものを全てエグる黒い球体が日本中を恐怖に陥れていくSFストーリー。ナン丸も丸神の里にルーツがあり、物に触れず小さな穴をあけるという地味な超能力を持っていた。しかし、それ以外はごく平凡な大学生であり、他の人と同じように超常現象に翻弄される彼の素直なリアクションが、観る人に没入感を与えてくれていたように思う。

また原作は90年代に連載されていたが、実写化にあたっては物語の舞台が現代に置き換えられている。それに合わせてナン丸のキャラクターにも変化があり、 デジタルネイティブな若者が抱える「何者かにならねば」という焦燥感と危うさを細田が体現していた。特に印象的だったのは、南丸が「能力はあくまでも“手段”に役立てるための道具であって、“目的”そのものじゃない。こんなものに人間様がいちいち振り回されてちゃいかんのです」と里の住民を説得するシーン。若干、古めかしい台詞だが、細田は絶妙な言い回しで、現代の若者による生きた言葉として成立させていた。
細田はその時代を生きる若者としてのリアリティを体現する役者だ。『95』では、1995年の渋谷で翔太郎(中川大志)率いる高校生チームの一員であるマルコを好演。ムードメーカーで飄々としているが、その佇まいからは平成の若者らしいパッションが漲っていた。
そんな細田が、『あんぱん』では激動の昭和を生きる若者を演じる。細田扮する原豪は、ヒロイン・朝田のぶ(今田美桜)の祖父で、石材店を営む釜次(吉田鋼太郎)の弟子。朝田家に居候しており、寡黙だけど、その胸には常に秘めたる想いを抱える職人だという。それを聞くだけでも、台詞がない時も内側から滲み出るものがある細田にぴったりの役柄のように感じる。また、細田は「時間が経たち、年齢を重ねてからの豪は人としての可愛らしさが出る場面もあるので、豪の人としての魅力を余すことなく伝えられるよう頑張ります」と意気込みを語っており(※)、物語の中で豪の成長譚も楽しめるのではないだろうか。今年、年男でもある細田の動向から引き続き目が離せない。
参照
※ https://realsound.jp/movie/2024/06/post-1701751.html
■配信情報
『七夕の国』
ディズニープラス「スター」にて独占配信中
出演:細田佳央太 、藤野涼子、上杉柊平、木竜麻生、鳴海唯、濱田龍臣、西畑澪花、深水元基、石田法嗣、金田哲、篠原篤、谷川昭一朗、足立智充、大西武志、政修二郎、奥貫薫、忍成修吾、朝比奈彩、金山一彦、中村育二、朝加真由美、伊武雅刀、三上博史、山田孝之
原作:岩明均『七夕の国』(小学館刊)
監督:瀧悠輔、佐野隆英、川井隼人
脚本:三好晶子、安里麻里、瀧悠輔
脚本協力:大江崇允
©︎2024 岩明均/小学館/東映






















