TVerはなぜユーザー数を伸ばし続けることができたのか “出会いと発見”の狙いを聞く

「これからはいかに“習慣化”していただけるか」

ーー2024年はTVerの機能の変化もありました。この点の手応えは?
薄井:プラスに働いていると感じています。今まではひとつのホーム画面から下にどんどんスクロールしなければ違う作品にたどり着けなかったものを、2024年からはドラマ、バラエティ、アニメとカテゴリに分けて、10月からニュースも追加しました。ホーム画面をカテゴリごとに分けたことによって、自分の好みのジャンルをしっかりとフォローしてくださる形はできたのかなと感じております。
ーーより使いやすくなり、自分の興味のあるものにたどり着きやすくなっていると思います。2024年はTVerオリジナル作品である北村一輝さん主演『おっちゃんキッチン』や、TVerのみで配信されるドラマのスピンオフ作品が増えた印象があります。
薄井:以前はいろんな番組で「スピンオフをやってみよう」という時期もあったのですが、2024年はピンポイントに絞って展開していきました。放送局さんとも相談しながら、どんな作品だと再生数が伸びるかなど情報を共有しながらより注視していきたいと考えております。完全オリジナル作品となる『おっちゃんキッチン』も多くの方に観ていただき、嬉しい限りですが、オリジナル作を量産していくというよりは、今回得たものを踏まえてひとつずつ検討していきたいですね。
ーー旧作ドラマの配信もさらに増えました。再生数も伸びていますか?
薄井:全体のベースが上がったのは間違いないです。提供していただける作品の種類が圧倒的に増えてきました。全体ランキングのベスト10に入るような誰もが観ている作品がたくさんあるというわけではないのですが、ユーザーひとりひとりの観たい作品を提供できる環境が少しずつ構築できているのではと手応えを感じています。
ーー2024年に公開されたデータで非常に興味深かったのが都道府県別のデータです。1人あたりの平均再生数ランキングの中で、宮崎県が1位、福井県が2位、鳥取県が3位、下位3都県に東京都、神奈川県、茨城県が並んでおり、首都圏エリアは下位を占めているのが意外でした。確かに、これまではドラマやアニメの“時差”があったものが、TVerによって解消された。TVerが果たした役割はとても大きいのではと感じています。

薄井:住んでいるエリアによって観られるものが変わっていた方々にとっては、TVerが貢献できている部分はあるかもしれません。ただ、逆に言えば首都圏で観ることができないローカル番組もこれまでたくさんあったわけです。現在、全国のローカル番組の配信も進めているので、これまで触れる機会がなかった作品を発見できる場を作りたいという思いはいつも持っています。
ーー確かに。ローカル番組から全国区になった作品は『水曜どうでしょう』(北海道テレビ)などほんの一握りでした。地元で愛された作品が全国区へという流れはTVerによってまた生まれていきそうです。直近では、森香澄さん主演を務めた『ローカルアナのさがしもの』(山梨放送)がTVerで配信されていましたね。
薄井:はい。まさにその点はこれからの課題で、全国のコンテンツを観ることができるのに、まだそれをユーザーの皆様に伝えきれていないので、その点は改善していきたいです。2024年12月23日から3月2日まで、『全国55局とっておき”街ネタ”特集』を配信しています。週替わりのテーマで各エリアのコンテンツが楽しめるものです。たとえば、ラーメン中部編とか北海道編というコンテンツがあって、北海道編なら北海道エリアでグルメを扱っている番組のラーメンの部分だけ全部まとまっていて、地方の名店を知ることができます。

ーー旅行するときなどはもってこいの特集ですね。
薄井:おっしゃるとおりです。まさにユーザーの皆様の生活に密着するような特集を展開できたらと考えています。まだ何が正解かはわからないですが、テーマやエリアごとにまとめる方法を中心に、これまでにないまとめ方を考えていきたいです。また、まだまだローカル局さんのコンテンツを活かしきれていない側面もあるので、ライブ配信などの場所としてもTVerを提供することができると、より全国いつでもどこでも、という形に繋げられると思っています。
ーーローカル番組を含めてさらなる拡張がありそうですね。あらためて、2025年の方針をお聞かせください。
薄井:コンテンツのジャンルをどんどん拡張していく方向性は変わりません。TVerはドラマ中心にユーザーに利用していただいてきたこともあるのか、男女比で言えば、女性ユーザーの割合がまだ多いです。

男性ユーザーにはまだまだ届けることができていない部分があるので、2024年に本格的に始まったスポーツジャンル、アニメジャンルにはまだまだ可能性があると思っています。課題としては、これからいかに“習慣化”していただけるかという点。「TVer」を聞いたことがある、使ったことがある方の総数はこの数年で大きく変化しました。とはいえ、熱中したドラマがあった3カ月間は使っていたけど、次のクールになったら使わない、オリンピックやスポーツの大会が終わったら使わないという方もまた多いんです。3カ月に1回が1カ月に1回になり、1カ月に1回を1週間に1回にしていただく。利用頻度をいかに高めていただけるかは大きな課題としてあります。一度観て終わりではなく、習慣的な利用に繋げていただくには何をするべきか。その点においても、長期間レギュラー放送のあるバラエティージャンルやニュースジャンルなどは大きな可能性があると考えていますし、習慣化につながる新しいサービスも考えています。2025年度が終わる頃には、「とりあえずTVer開いてみよう」となるようなサービスになっていたいですね。






















