『おむすび』が朝ドラだからこそ描けた震災 1月17日の黙祷に込められた作り手たちの思い

『おむすび』が朝ドラだからこそ描けた震災

 結が栄養士として被災地に向かうというドラマチックな展開を想像していたが、その役割は神戸栄養専門学校時代の仲間であるカスミン(平祐奈)が担うことになる。結は気仙沼から帰ってきた彼女の話を聞き、結から聞いた避難所での体験談やいっしょに作った炊き出しの経験が役に立ったとカスミンから感謝される。この展開は意外だったが、同時にとても『おむすび』らしいと思った。

 1月17日に放送された第75話では2012年の1月17日となり、神戸と石巻が黙祷を捧げる場面が交互に描かれる。このシーンは「実際の映像」が使われているのだが、現実の被災映像を抑制してきた『おむすび』だからこそ、この場面を観てほしいという作り手の思いが伝わってくる。

 その後、結たち神戸の商店街の人々が黙祷を捧げる場面が描かれ「あの日のこと」を振り返る。結の父・聖人(北村有起哉)は「徐々に忘れられていくんかな? あの日のこと」「20年後30年後でも覚えてくれとう人おるんかな?」と疑問を投げかけるのだが、その答えが『おむすび』なのだと感じた。

 『おむすび』を観ていて強く感じるのは時間の流れだ。それは震災描写に一番強く現れており、震災が起きた日だけでなく、被災した人々がその後、どう生きているかをみせていくことで「すべては日常の中で続いていくことなのだ」と描いているように感じる。

 それが今回は阪神・淡路大震災を経験した人々が、東日本大震災で被災した東北の人々に対して自分たちの経験を糧に何ができるか?と自問自答する姿に現れていた。これは半年という長丁場で、続いていく物語を描ける朝ドラだからこそできる観せ方である。

■放送情報
連続テレビ小説『おむすび』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:橋本環奈、仲里依紗、北村有起哉、麻生久美子、宮崎美子、松平健、佐野勇斗、菅生新樹、松本怜生、中村守里、みりちゃむ、谷藤海咲、岡本夏美、田村芽実ほか
語り:リリー・フランキー
主題歌:B'z「イルミネーション」
脚本:根本ノンジ
制作統括:宇佐川隆史、真鍋斎
プロデューサー:管原浩
写真提供=NHK

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