橋本環奈に託された特殊なヒロイン像 『おむすび』は困難に立ち向かう人々を応援し続ける

『おむすび』橋本環奈に託されたヒロイン像

 「困難に立ち向かうあなたに届きますように」。朝ドラことNHK連続テレビ小説『おむすび』第15週「これがうちの生きる道」を観て、昨年の『第75回NHK紅白歌合戦』での橋本環奈の言葉を思い出した。B’zが『おむすび』の主題歌「イルミネーション」を歌うときの橋本の曲紹介コメントである。B’zは主題歌のあと、サプライズで「LOVE PHANTOM」「ultra soul」も続けて歌い、会場は最高潮に盛り上がった。何もかも忘れて楽しむことの素晴らしさを感じたひとときであった。「おいしいものを食べると悲しいことを忘れられる」が結(橋本環奈)の座右の銘だが、音楽もひととき悲しいことを忘れたり、むしろ思い切り悲しむことができたりするものである。

 「困難に立ち向かう」人たちを描いたのが第15 週。2011年3月11日、東日本大震災が起こり、結は「人を助けるため」管理栄養士を目指す決意を固める。

 これまで結はずっと、困っている人を放っておけない性分を「米田家の呪い」とネガティブに捉えていた。でも、そうじゃない、「これがうちの生きる道」なのだと自覚し、次のフェーズに進む。余談ながら、この言葉とPUFFYのヒット曲「これが私の生きる道」(1996年)となにか関係はあるのだろうか。ヒットした年と2011年が遠く離れ過ぎているのでとくに関係ないかもしれない。

 話を戻して、2011年3月11日。出産した結が、花と名付けた娘の育児に追われていたときに、東日本大震災は起こった。結や歩(仲里依紗)をはじめとして、阪神・淡路大震災を経験した神戸の人たちは、自分たちの体験を思い出して苦しくなったり、だからこそ、いま同じような苦しみを味わっている東北の人たちを強く心配したり。誰もが、自分にできることはなにかないだろうかと考えた結果、菜摘(田畑志真)は震災から2週間後、ボランティアに出発する。また、東京の病院で働いている佳純(平祐奈)は医療チームの一員として現場に入った。菜摘がボランティアで何をしたかは描かれていないが、1年後、震災の記憶を自分たち若い世代が次の世代に伝えていくと大人たちの前でしっかり宣言した。

 現地に入った佳純は、栄養学校時代、結の手伝いで炊き出しを経験したことを生かして、避難所で炊き出しを行い(思い出のわかめおむすびとサバツナのけんちん汁)、みんなにあたたかい食事をとってもらえたことを感謝して、わざわざ結の家に訪れた。

 佳純は、結が阪神・淡路大震災震の避難所で温かい食事が恋しかったことを記憶していたのだ。そして、自らの栄養士としての知見も生かして、現場の人に栄養があっておいしい、心と体にうれしい食事を用意することができた。

 菜摘の宣言や、避難所での佳純の語りは、まるで従来の朝ドラヒロインのようである。でも、『おむすび』のヒロイン・結は育児があって身動きがとれない。そんな自分に何かできることはないかと考えながら、育児に追われ東日本大震災から1年近くが経過する。育休が終わり職場復帰する頃、結は入院中にお世話になった管理栄養士・西条小百合(藤原紀香)と再会し、彼女の話をきっかけに管理栄養士になろうと考える。震災で困っている人、困難に立ち向かっている人に、栄養のあるできるだけ美味しいものを届けたいと結は強く思うようになったのだ。そのためには栄養士よりも管理栄養士のほうがもっとできることが増えるからだ。

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