『劇場版モノノ怪 唐傘』はパッケージも豪華絢爛 特製ブックレットに秘められた謎と伏線

『劇場版モノノ怪』はパッケージも豪華絢爛

 美と恐れは、時として同じ顔を持つ。人の心の闇が深ければ深いほど、そこには不思議な輝きが宿るのかもしれない。豪華絢爛な大奥に秘められた願いと情念、そして『モノノ怪』に現れる唐傘の真なる姿。私たちの心に潜む美しさと恐ろしさの境界をまばゆいほどに映し出し、全国の映画館で観客を魅了した『劇場版モノノ怪 唐傘』が、Blu-ray&DVDになって私たちの手元に届けられる。

 2007年にTVアニメシリーズとして放送された『モノノ怪』は、絵巻物のような緻密かつ大胆な美術、CGと和紙テクスチャを組み合わせた斬新な画面で魅せる。そして何より、切なくも強く魂を揺さぶる共感性の高いストーリーが当時の視聴者を圧倒し、アニメ史に残る傑作として語り継がれている。時代と場所を越えて描かれる人と怪の物語は、私たちの心に深く刻まれる普遍的な何かを宿しているのだ。

 視聴環境を選ばない配信の手軽さも魅力だが、Blu-ray&DVDならではの豪華な特典の数々が、作品世界をより一層深めてくれる。映像特典として公開記念舞台挨拶やプロモーション映像、主題歌「Love Sick」のAnimation Music Videoを収録。さらに物理メディアならではの封入特典として、特製ブックレット、和紙風タックステッカー、アニメーションキャラデザイン・総作画監督の高橋裕一による描き下ろしビジュアルカードが同梱される。これだけの特典を見ると、やはりパッケージ版は外せない。作品世界を永久に手元に残せる贅沢な一品に、ファンなら思わずうっとりしてしまうはずだ。

(左から)和紙風タックステッカー、描き下ろしビジュアルカード

 本作は『モノノ怪』シリーズの中でも特に鮮やかな色彩で彩られ、大奥という謎多き場所を巡るアトラクションのような体験を作り出していた。浮世絵調の「座敷童子」、クリムト風の「海坊主」、尾形光琳を連想させる「のっぺらぼう」、水墨画タッチの「鵺」、大正モダンな「化猫」。これらのテーマ性のあるタッチを受け継ぎながら、本作ではより大胆な色使いと構図で、豪華絢爛な大奥の世界をまばゆいばかりの視覚体験として描き出していた。今なお多くの観客の心に、その鮮やかな光景は焼き付いているに違いない。

 そんな色彩豊かな表現を継承するように、パッケージデザインにも本作の世界観が凝縮されている。パッケージの中央には北川の人形が、そしてその背後には作品の中でも象徴的な「あの井戸」が配されている。地下に巨大な空間を持つ井戸は、時に子宮や産道のイメージを持ち、世継ぎを産むことを求められる大奥という場所性を表現しているのかもしれない。

 深い紫の闇が広がる井戸は、作中でも描かれていたように、観る者の心を奥深くへと誘うような不思議な魅力を放っている。カバーを外すと、中からは唐傘の絵巻物のような意匠が。屏風に触れているかのような和紙のざらりとした手触りまでもが、本作独特の美術表現を見事に体現しており、手に取る喜びを一層深めてくれる。

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