2024年の年間ベスト企画
成馬零一の「2024年 年間ベストドラマTOP10」 『ベビわる』の現代性、宮藤官九郎の怪作
リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2024年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、国内ドラマの場合は、放送・配信で発表された作品から、執筆者が独自の観点で10作品をセレクトする。第3回の選者は、ドラマ評論家の成馬零一。(編集部)
成馬零一の「2023年 年間ベストドラマTOP10」 日本の“テレビドラマ”だからできること
リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2023年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、ア…
1.『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』(テレビ東京系)
2.『イシナガキクエを探しています』(テレビ東京系)
3.『海のはじまり』(フジテレビ系)
4.『不適切にもほどがある!』(TBS系)
5.『虎に翼』(NHK総合)
6.『地面師たち』(Netflix)
7.『【推しの子】』(Prime Video)
8.『光る君へ』(NHK総合)
9.『さよならのつづき』(Netflix)
10.『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)
1位の『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』は、アクション映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズのテレビドラマ化。阪元裕吾の脚本が素晴らしく連続ドラマとして面白かった。ルームシェアをしている女殺し屋の杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)のゆるふわな日常と殺し屋としてのハードなアクションがシームレスにつながっているのがシリーズの特色だが、今回のドラマ版では殺し屋の世界を通して今の若者が直面している闇バイト的感覚を抽出した上で、ではどう生きるべきかという問題意識が描かれており、労働を描いた青春ドラマとして素晴らしかった。
2位の『イシナガキクエを探しています』は、深夜に放送されたフェイクドキュメンタリー。「公開捜査番組」というテレビ番組だと思って観ていると、番組の節々に配置された違和感がやがて牙を剥き、とんでもないところに連れていかれる問題作。プロデューサーの大森時生は本作のようなテレビ番組の放送事故を模したフェイクドキュメンタリー番組を多数手がけている新鋭の若手プロデューサー。今年は『フィクショナル』というショートドラマ配信アプリ「BUNP」で配信されたフェイク動画と陰謀論を題材にしたBLドラマもプロデュースしているのだが、こちらもおすすめ。
3位の『海のはじまり』は、『silent』(フジテレビ系)、『いちばんすきな花』(フジテレビ系)を手がけた脚本家・生方美久の最新作で、家族をテーマにした物語。チーフ演出を風間太樹が担当していることもあってか、芝居と映像を見せることに特化したドラマとなっており、台詞は最小限に抑えられているのだが、だからこそ生方が得意とする「静かで優しい世界」が際立った尖った作品となっている。月岡夏を演じる目黒蓮の恐る恐る自分の気持ちを伝えようとする不器用な振る舞いから終始目が離せなかった。
4位の『不適切にもほどがある!』(以下、『ふてほど』)は宮藤官九郎脚本の社会風刺コメディ。今年の宮藤は豊作で、『ふてほど』のほかにも、昨年ディズニープラスで配信された『季節のない街』がテレビ東京の深夜枠で放送され、初めての医療ドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ系)と、山田太一の原作小説をリメイクしたSPドラマ『終りに見た街』(テレビ朝日系)が夏に放送された。どれも社会的なテーマを笑いを交えて描いた怪作で、全作ベスト10に入れてもよかったが、一番の話題作として『ふてほど』をランクインさせた。
5位の連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『虎に翼』も、今年を代表する話題作。透明化されてきたマイノリティの声を拾い上げ、朝ドラでここまで社会的テーマに踏み込んだ表現ができると証明した意欲作。