『ライオン・キング』はなぜ愛される? ディズニーの歴史変えた名作のヒット理由を徹底分析

『ライオン・キング』が愛される理由を分析

 1994年に公開され、映画賞、音楽賞を総なめにしたアニメーション映画『ライオン・キング』。本作は「ディズニー黄金期(ディズニー・ルネッサンス)」の1作として、圧倒的な映像美と圧巻のミュージカルナンバー、感動的な物語で人々を魅了した。世界興行収入は9億8000万ドルと、2024年時点でディズニー・アニメーション映画歴代5位の記録、2019年に公開された“超実写版”はディズニー映画で世界歴代1位の16億5600万ドル獲得した。

 また1997年にはミュージカル『ライオン・キング』が、ブロードウェイで初演を迎えた。同作はパペットやマスクを駆使した圧巻の美術デザインで絶賛を受け、1998年のトニー賞で最優秀演出賞、最優秀衣裳デザイン賞を受賞。日本では1998年から、劇団四季による驚異の26年ものロングラン公演が続いている。

 なぜ『ライオン・キング』はそれほどまでに人々に愛されるのか。その魅力について分析していきたい。

父から子へ受け継がれる「サークル・オブ・ライフ」

 『ライオン・キング』の物語の根幹となるのは、ムファサがシンバに教える“命の環”、「サークル・オブ・ライフ」だ。肉食動物であるライオンは草食動物を食べるが、ライオンが死ねばその体からは草が生え、草食動物がそれを食べる。そうして命は循環していく。だから全てに敬意を払うべきだ。その後、過去の過ち(実際はスカーにだまされていたのだが)に捕らわれていたシンバは、この教えを胸に王として故郷を救う、感動的な物語となっている。

エルトン・ジョンらによる心揺さぶる音楽

 『ライオン・キング』を語るうえで欠かせないのは、その音楽だ。イギリスのレジェンド的アーティスト、エルトン・ジョンが参加し、名曲「サークル・オブ・ライフ」や「愛を感じて」などを作曲家のティム・ライスとともに担当。この2曲はアカデミー賞歌曲賞にもノミネートされ、「愛を感じて」が栄冠に輝いた。

 『ライオン・キング』のメッセージの根幹である「サークル・オブ・ライフ」や、シンバとナラのロマンチックなデュエット「愛を感じて」は、まさに名曲だ。また、ティモンとプンバァがシンバに「気楽な生き方」を教える「ハクナ・マタタ」も人気が高い。こちらもアカデミー賞歌曲賞にノミネートされており、軽快なビートに乗せて、彼らがいかにジャングルで自由に生きているかを歌う。

 “超実写版”では、アニメーション版の音楽を担当したレジェンドたちに加え、ファレル・ウィリアムスがプロデュースに参加。アニメーション版からブラッシュアップされ、よりアフリカ音楽の影響とそれに対する敬意を感じさせる楽曲が並ぶ。エルトン・ジョンとティム・ライスが書き下ろした新曲「スピリット」は、ナラ役を務めた世界の歌姫ビヨンセの力強い歌声も相まって、同作の必聴トラックの1つだ。第77回ゴールデングローブ賞で、最優秀主題歌賞にノミネートされたことも記憶に新しい。

魅力的なキャラクターたち

 『ライオン・キング』の感動的な物語は、魅力的なキャラクターたちによって成り立っている。主人公のシンバは、無邪気な子ども時代に「父を死なせてしまった」という深い心の傷を負うが、やがてそれを克服する。罪悪感を背負った若者から、強く誇り高い王となる彼の成長物語でもある本作は、シンバが魅力あるキャラクターだからこそ成り立つものだ。

 故郷から逃げ出したシンバと出会い、親友となるのが、ミーアキャットのティモンとイボイノシシのプンバァ。「ハクナ・マタタ」を歌い、自由に楽しく生きる彼らは本作のコミック・リリーフで、後にテレビシリーズも製作されるほどの人気キャラクターとなった。

 シンバの父ムファサは、プライドランドを支配する偉大な王だ。その死後も彼はシンバの心の中で生き続け、息子を王として成長させる大きな役割を担っている。

 『ライオン・キング』のヴィランは、ムファサの弟であり、シンバの叔父であるスカー。彼はムファサのことを目の敵にしており、兄を殺して王座を手に入れる。シンバに父の死は自分のせいだと思い込ませ、プライドランドから事実上追放したのも彼だ。アニメーション版と“超実写版”を観る限りでは、彼がムファサを敵対視する理由はよくわからない。シンバに対しては、彼がいなければ自分が次の王になれたと考えていた。一方で“超実写版”では、シンバの母サラビに執着するような様子も見せている。スカーは迫力満点のヴィランとして、物語を大いに盛り上げた。

 エルトン・ジョンやハンス・ジマーといったレジェンドたちによる音楽に乗せて、命の環をつなぐ父と子の感動的なストーリーが語られる『ライオン・キング』。魅力的なキャラクターたちが織りなすその物語は、多くの人の胸に響く。

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