朝ドラが描いてきたヒロインの“就活” 橋本環奈、伊藤沙莉、福原遥が体現した社会の変化
この『虎に翼』と対照的なのが、福原遥が主演を務めた『舞いあがれ!』(2022年度後期)だ。物語のはじまりは1990年代。つまり、ヒロイン・舞(福原遥)は平成生まれであり、寅子とは過ごしている環境がまったく異なる。令和のいまほどではないものの、女性が社会に出て働くのも当たり前の時代だ。心優しい両親に見守られながら舞が志したのはパイロットだった。これまた男女関係なく、就くのがかなり困難な職業だ。
『舞いあがれ!』福原遥は時代が求めたヒロインだった 優しさと主張を織り交ぜた表現力
最終回が目前に控えている朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合)において、ヒロイン・岩倉舞(現:梅津舞)を見事に演じきり、有終の美を…
『舞いあがれ!』では就活のシーン以上に、航空学校での厳しい訓練のシーンが強く印象に残っている。勉学に励んだからといってなれるものではない。けれども仲間同士の支え合いによって、どうにか舞は試験に合格し、就活にも成功することができた。が、そんなところへリーマン・ショックがやってきた。舞の入社は1年延期となり、実家のネジ工場が経営危機に。さらに父が急逝したことで、舞はパイロットの道をあきらめ、家業を継ぐ決断をした。一連のシーンを思い出すだけで胸が痛くなる。しかしあの時代、同じような苦境に立たされた人は少なくないのだろう。本作もまた、ヒロインの就活事情を描きながら、社会全体を俯瞰していた点が『虎に翼』と近い。
では、『おむすび』はどうか。思えば、ヒロインである結は『舞いあがれ!』の舞と同世代である。舞が“空”を夢見ている頃、結はギャルをやっているわけだ。興味深い。結は真っ直ぐな心(ギャルマインド)と、そこから生まれる言動により、これまで多くの人々を結びつけてきた。栄養士を志すギャルの就活は、これまでの朝ドラでは観られなかったものになるにちがいない。そこではどのような社会背景が映し出されるのだろうか。
■放送情報
連続テレビ小説『おむすび』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:橋本環奈、仲里依紗、山本舞香、小手伸也、麻生久美子、北村有起哉、緒形直人、キムラ緑子、佐野勇斗、平祐奈、一ノ瀬ワタル
語り:リリー・フランキー
主題歌:B'z「イルミネーション」
脚本:根本ノンジ
制作統括:宇佐川隆史、真鍋斎
プロデューサー:管原浩
写真提供=NHK