『若草物語』涼、恵、芽のそれぞれの“分岐点” 律のプロポーズの時がついに訪れる

『若草物語』ついに訪れた律のプロポーズの時

 一方で、晴れやかな表情を浮かべるもう一人の人物が恵だ。彼女は勤めていたハローワークを退職し、新たな道を歩み始めていた。自身と同じように職場でのハラスメントに苦しむ非正規公務員たちが、安心して働ける環境を築くため、佐倉(酒井若菜)と共に待遇改善を求める署名活動を開始したのだ。毎日忙しく駆け回る恵の姿は生き生きとしており、その表情にはかつての悩みを抱えていた頃の面影はない。

 そんな彼女のもとに現れたのは、元彼氏の大河(渡辺大知)だった。彼は会社の環境の変化を話しつつ、復縁を持ちかけてきた。しかし、大河の言動には相変わらずモラハラの影がちらつく。恵は毅然とした態度でこれを拒絶。今まで溜めてきた鬱憤をしっかりとぶつけ、「今が一番幸せ!」とはっきり言い切った。そして、涼に今後のことを相談する。今付き合っている相手との同居のため、この家を出ていくと。

 衿(長濱ねる)の件もあったからだろうか。涼の「恵姉はそれで幸せなの? 私は恵姉が幸せならそれでいい」という言葉にも成長を感じる。それぞれが新たな道を歩み始め、かつて常に寄り添っていた姉妹がそれぞれの未来へ進む姿は、どこか寂しさを感じさせる。それでも、別々の道を歩む彼女たちが、それぞれの幸せを掴んでいくことを願わずにはいられなかった。

 涼と律(一ノ瀬颯)の関係にも、ついに“その時”が訪れた。穏やかな日常の中、律は涼にプロポーズをする。「背中に湿布が貼れなかったら助けてあげたい」。その言葉に宿っているのは紛れもない愛だ。彼は、涼と共に暖かい生活を築きたいと願っていた。しかし、涼は頑なに律を拒む。

「律の臨む幸せは私にはあげられない」

 自分の信念を貫きたいという思いと、彼の気持ちを傷つけたくないという葛藤が、ごちゃ混ぜになって涼の瞳に涙を滲ませる。しかしこのプロポーズの律の言葉に、視聴者の中には微かな違和感を覚えた人もいたのではないだろうか。「涼にも僕が必要なはずだ」「家族も喜ぶ」などのいつも相手に寄り添う律らしくない言葉が並ぶ。

 律のこれまでの優しい眼差しを思うと、やはり最後はこの二人に結ばれてほしい。心の奥底でチラついてしまう気持ちはあるものの、涼を見ていると、それがいかに視聴者である自分のエゴかを考えさせられる。涼の涙に、人が抱える「絶対に譲れないもの」とは何か、その境界線に触れるきっかけをもらった第9話。それは、愛や幸せの形が一つではないことを改めて思い知らされる瞬間でもあった。最終回、涼はどんな形の自分らしい幸福を選び取るのだろうか。

■放送情報
日曜ドラマ『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜放送
出演:堀田真由、仁村紗和、畑芽育、長濱ねる、一ノ瀬颯、深田竜生、生瀬勝久、臼田あさ美、渡辺大知、坂井真紀、筒井真理子ほか
原案:ルイーザ・メイ・オルコット『若草物語』
脚本:松島瑠璃子
音楽:はらかなこ
演出:猪股隆一、瀬野尾一
プロデューサー:森有紗、松山雅則
協力プロデューサー:河野英裕
チーフプロデューサー:松本京子
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/wakakusa/

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