山下美月、佐野勇斗、倉悠貴の存在感 『六人の嘘つきな大学生』は次世代スターの宝庫だ
映画やドラマ、演劇といったフィクション作品は、私たちの生きる現実社会の鏡だ。とすれば、それぞれの物語世界の中で生きる俳優たちは、私たち一人ひとりの鏡に映った存在だともいえるだろう。俳優たちは自らの心と身体に特定のキャラクターを宿すスペシャリストだが、それ以前に我々と同じく生活者である。そんな彼ら彼女らの動向から、いまの時代や社会を“読む”ことができるのではないだろうか。佐野勇斗、倉悠貴、山下美月の動きに注目してみたい。
ここに並べた3人は、いずれも『六人の嘘つきな大学生』に出演している者たちである。本作は、誰もが憧れる「スピラリンクス」という大企業の、新卒採用試験の最終選考過程を描いたもの。最終選考まで残った6名の大学生は、このメンバーでひとつのチームを作り上げ、ひと月後のグループディスカッションに臨むことを課せられる。日々の交流を経てチームの結束力は高まっていくが、なんと直前で課題が変更されることに。それは、「合格者をひとりだけディスカッションで決めよ」というもの。あまりに酷な課題だ。当然ながら目を背けたくなるような言い争いも生まれる。つまりはそう、若き演技者たちによる濃密な会話劇が、いや、壮絶な演技合戦が繰り広げられることになる。
佐野勇斗が演じる九賀蒼太は慶應大学の学生で、“フェア(公平)”を重んじるリーダー的な存在だ。どんなときも冷静沈着な性格の持ち主で、放送中の朝ドラ『おむすび』(NHK総合)で好演しているヒロインの恋人・四ツ木翔也とは好対照の人物だといえるだろう(蒼太は「スピラリンクス」で活躍することを、そして翔也はメジャーリーガーを目指している。“夢を追う”という点に関しては共通点もあるかもしれないが)。片や頭脳、片やフィジカル。片やクール、片や熱血。私たちはいま、佐野のふたつの顔を楽しむことができるのである。
倉悠貴が演じる森久保公彦は一橋大学の学生で、どちらかといえば控えめな人物だが、穏やかな性格で分析力に優れている。野心あふれる6人の学生たちの中では、もっともマイルドなキャラクターだといえるかもしれない。いっぽう、Netflixでも配信がスタートしたドラマ『透明なわたしたち』(ABEMA)では、起業家として成功し、セレブリティの仲間入りを果たす高木洋介を好演中。佐野が『六人の嘘つきな大学生』と『おむすび』で好対照のキャラクターを演じているように、倉もまた真逆のタイプだといえる人物像をそれぞれの作品で立ち上げている。
山下美月が演じる矢代つばさは明治大学の学生として国際文化を学び、語学力に長けている。明るい性格でコミュニケーション能力も高く、自分という存在に強い自信を持っている人物だ。社会に出れば大活躍すること間違いなしだろう。これを体現する山下はアイドルから本格的に俳優業へと軸足を移したところ。2025年になればヒロインを務める連続ドラマ『御曹司に恋はムズすぎる(カンテレ・フジテレビ系)の放送がはじまり、これに続くかたちで主演映画『山田くんとLv999の恋をする』が封切られることになる。『六人の嘘つきな大学生』に収められた山下のパフォーマンスは、来年以降の彼女の活躍への期待心をさらにあおるものだろう。