初期宮﨑駿が描く“人間の善性” 『ルパン三世 カリオストロの城』はなぜ語り継がれるのか

『カリオストロの城』はなぜ語り継がれるのか

 一歩間違えると噴飯ものの臭い臭い台詞だ。だが、同じくここだけパズーの顔をした銭形のこの台詞を聴いたときの、溢れ出す多幸感よ。なぜこのシーンで、こんなにも幸せな気分になれるのか。それは、「人間って、素晴らしいな」と思えるからだ。

 『未来少年コナン』、今作、『天空の城ラピュタ』などの初期宮﨑作品は、本当のラスボス以外は基本的に「いい人ばかり」である。残念ながら現実世界では、自らも含めて「いい人ばかり」ではない。作品内では、レプカやカリオストロ伯爵やムスカたちは、一様に天罰を受けたような最期を迎える。だが、現実世界のカリオストロ伯爵たち(悪い権力者たち)は、特に天罰を受けることもない。

 だからこそ、今作を通して、人間の善性を信じたいのだ。人間は素晴らしい、人生は素晴らしいということを、感じたいのだ。

 今作を映画館まで観に行く層は、昔から何度も何度も観ている年代の方が多いかもしれない。でも、本当に今作を観てほしいのは、公開時のメインターゲットだったと思われる、子供たちだ。これから長く生きていく人生が、素晴らしいものでありますように。次元や五エ門や不二子たちのような「気持ちのいい連中」に囲まれた人生でありますように。

 そんなことを願ってしまうぐらいには、観た人間を「善人」にしてしまう作品だ。もしも、自らを「薄汚れてしまった」と思ったら、真っ先にこの作品を観てほしい。観終わる頃には、心がすっかり漂白されているはずだ。

■公開情報
『ルパン三世 カリオストロの城』
全国公開中
原作:モンキー・パンチ
監督:宮﨑駿
出演:山田康雄(ルパン三世役)、小林清志(次元大介役)、井上真樹夫(石川五ェ門役)、増山江威子(峰不二子役)、納谷悟朗(銭形警部役)ほか
配給:TOHO NEXT
原作:モンキー・パンチ
©TMS 製作・著作:トムス・エンタテインメント
公式サイト:lupin-cagliostro45.com

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